義兄弟
第五章
「いやだっ、やめ…っ」
「あばれるな」
押し殺した怒声と共に、きつく前を掴まれて、痛みに一瞬で俺は抵抗を止めた。
「あばれた罰だ。でかい方にするぞ」
「嫌だ、ほんとにっ」
「うるさいよ」
震えた俺の拒絶を一言ではねのけ、タクは俺を押さえつけると、後腔に毒々しい紫色のローターを半ば無理矢理押し込んだ。
毎日のように、男を受け入れているソコは、俺の意志とは関係なしに、それをずぶずぶと飲み込んでいく。
すっかり奥まで埋没させると、タクは満足げに、ひくつく窄まりを撫でた。
「しっかりココを締めておけよ。勝手に出したら、この倍の太さのバイブを突っ込んでやるからな」
声と共に、ぴしゃりと尻を叩かれて、俺は小さく悲鳴をあげた。
身体に埋められた異物。その大きさが、どれくらいの物なのか、俺にはよく見えなかった。
それほど大きくないものにしても、吐き気がこみ上げ、冷や汗が吹き出るほどに苦しい。
「ほら、立て。買い物行くぞ」
立ち上がったタクにつま先で蹴られて、俺はのろのろと顔をあげた。
「…え?」
「早く服着ろ」
身体の中心に埋められた異物は、少し身体を動かすだけで、その存在を主張して、俺を苦しめた。
「た、てない」
立ち上がるどころか、身体を起こすことさえやっとだ。
掠れた声で訴えると、タクは聞こえよがしな舌打ちをして、腕を掴んで無理矢理俺を引きずり立たせた。
「甘えてんじゃないぞ」
言いざま平手で頬を叩かれる。
焼け付くような痛みのそこを手で押さえ、俺はそのまま、部屋の外へと引っ立てられるように、連れ出された。
「お、準備できた?入れたの?」
「こいつ、最近態度でかいな。暴れるし、立てないとか我が儘抜かすし」
「まーだ、自分の立場分かってないのね」
兄弟は、二人してじろりと俺を睨み付けた。
二人のその切れ長の目は、俺に似ている。親父の遺伝だ。
俺は、彼らに睨まれるたび、彼らと同じ血が、自分にも流れていることを、思い知らされた。
「混んでるなあ」
俺の身体を二人が挟むようにして立つ。
連休のせいか、電車はひどく混んでいた。
ガラガラの電車だったら、俺があんな目に遭うこともなかっただろう。
俺は、電車の中で、ずっと二人に身体をまさぐられていた。
前や胸をいじられると、ここ数週間ですっかり馴らされた身体が反応してしまう。
後腔がひくつき、埋められた異物をぎゅっと締め付ける。
意志ではどうにもならない昂りを、服の上から煽るように指先で辿られる。
他にすがれる物はなく、俺はタクの服を握りしめると、タクの肩に額を付けて、俺は熱い吐息を誤魔化した。
唇を噛み締め、つま先に力を込め、何度か快楽の波をやり過ごす。
もう、これ以上されたら、出してしまう。
ギリギリまで追い込まれた頃、ようやく目的地に到着した。
二時間ほど、あちこちの店を見てまわり、タクとヒロの買い物に付き合わされた俺は、ぐったりと疲れ果てていた。
尻の中に異物をいれて、動き回るなど、人のすることじゃない。
「飯でも食うか」
夕飯時を少し過ぎた八時頃、タクがようやくそう口にして、俺はほっと息をついた。
これで、少しは座って休める。
奥の席に通され、俺の隣にタク、向かいにはヒロが座った。
全く食欲はなかったが、適当に注文を住ませる。
ずっと、喉が乾いていてしょうがなかったので、俺は早速水の入ったグラスを手に取った。
その瞬間、身体の奥から振動が響き、俺は思わず手にしたグラスをひっくり返した。
「何やってんだよ」
店員が慌てておしぼりを持ってくる。
俺は何度も頭を下げながら、震える手でテーブルを拭いた。
「や、やめて」
小声で訴えるが、二人はにやにやとするばかりだ。
BGMや、客の話し声でうるさいくらいの店内に、この低いモーター音が聞こえるはずもなかったが、俺には身体中を揺るがすほどの、大きな振動に思える。
料理が来るまでの数分間。
二人はスイッチを入れたり、切ったり、振動を強めたり、弱めたり、好き放題して、俺の反応を楽しんだ。
料理が運ばれてきてからも、俺は食事どころではない。
身体中汗びっしょりで、中途半端に勃ちあがった前と、振動に痺れたようになった後腔の事しか、考えられない。
二人は、うまそうに食っていたが、その間も交互にコントローラーをやりとりしていた。
「さっさと食えよ」
ほとんど手の付けられていない料理を見て、ヒロが言う。
「あと五分で食え。でないと今度は、スイッチを入れたまま、歩かせるぞ」
口調は軽いが、そういうタクの目は全く笑っておらず、俺には十分脅しに響いた。
かっこむようにして無理矢理口に押し込み、水で流し込む。
こうして、拷問のような食事が終わり、俺はまた兄弟に挟まれて、ふらふらと歩き出した。