不意に目が覚めた。ゆっくりとあたりを見回す。
カーテンの隙間から柔らかな光。
隣には眠るナオさん。
僕はいっぺんに幸せな気持ちになって、ベッドに身体を起こした。
手を伸ばしてベッドの脇のカーテンを開ける。
薄暗かった部屋の中に春の朝の光が満ちた。
「ん・・・・・」
ナオさんが一瞬まぶしそうに顔を顰めて、ごろりと寝返りを打つ。
「ナオさん?」
顔を近づけて呼んでみる。
穏やかな寝息。
平和な寝顔。
僕は思わず笑みを漏らすと、ナオさんを起こすのを止めて、
一人でベッドから起きあがった。
時計の針はちょうど7時を指している。
春休みだというのに、いつもどおりに起きてしまう、自分の体質が
ちょっとうらめしい。
僕は服を着て、台所に行った。
今日の朝ご飯はホットケーキにしよう。
あと、卵とベーコンとスープと・・・
メニューを考えながら、冷蔵庫から材料を出す。
家で料理する時より、ナオさんの家で料理するときの方が、断然力が入る。
もともと、料理は好きだったけど、ナオさんと知り合ってから、
ますます好きになった。
ナオさんは僕の料理をそれは美味しそうに食べてくれるから、
すごく作り甲斐がある。
僕は腕まくりすると、エプロンを付けて料理にかかった。

ボウルの中にはホットケーキのたね。
普通のと、コーンが入ったのと。
鍋の中にはにんじんときゃべつとたまねぎとセロリとじゃがいもと
ベーコンの入ったスープがぐつぐつ煮えて。
ナオさんは野菜があんまり好きじゃないのだけど、スープにすると
たくさん食べてくれるから、よく作るようになった。
テーブルにはホットプレート。
朝ご飯の準備は万端整った。
さて・・・・
僕は相変わらずベッドで眠りこけているナオさんを眺めた。
ナオさんはあんまり寝ない人だけど、いったん寝るとなかなか起きない。
僕はベッドの脇に立って、とりあえずスタンダードに身体を揺すった。
「ナオさん!朝だよ!起きて!」
景気良く言いながら揺すってみたが、ナオさんは低く唸っただけで
起きる気配は無い。
「ナーオーさん。起きて?」
ベッドの脇にしゃがみこんで、今度は耳元で甘く囁いてみる。
もしかしたらと思ったけど、やっぱり起きてはくれなかった。
ほっぺたを引っ張ってみたり。
鼻をつまんでみたり。
ちょっとキスしてみたり。
それでもやっぱり起きてはくれない。
昨日、さんざん運動したせいで、僕のおなかはもうぺこぺこだ。
僕はとうとうナオさんの上によじ登った。
馬乗りになって、飛び跳ねる。
「ナオさん!もう起きてってば!おなかすいた〜!」
どしん、とナオさんのおなかの上に体重をかけると、さすがのナオさんも
低く呻いて目を開けた。
「目、醒めた?」
寝ぼけ眼の顔をのぞき込む。
「醒めた」
ちょっと掠れた色っぽい声で、ナオさんは笑って僕を抱き寄せる。
「まこちゃんおはよう」
額にキス。
「ナオさんおはよう」
頬にキス。
僕らは見つめあって、お互いに笑みを洩らすと、二人で揃ってベッドから
降りた。

「まこちゃん、今日は何がしたい?」
ホットプレートから最後のベーコンを摘み上げて、口に入れながら
ナオさんが云う。
もう、朝ご飯はあらかた済んでいた。
昨日の夜は二人でたくさん運動したから、二人とも食欲旺盛で、しばらくは
話もせずに夢中で食べていた。
山のようなホットケーキを平らげて、ナオさんはスープもおかわりして、
二人ともやっと落ち着いた。
「そうだなあ・・・」
何がしたい?なんて聞かれても、なかなか急には思いつかない。
ナオさんと一緒に居られれば、僕はそれだけで幸せだし。
僕はグレープフルーツの皮を剥きながら、考え込んだ。
「お出かけする?ウチにいる?」
せっかちなナオさんは、机に両肘をついて僕の顔をのぞきこむと、
畳み掛けるように聞いてくる。
「うーん・・・」
僕は、せっかくナオさんと一緒なのだから、なにか特別なことを・・・と、
考え込んで曖昧な返事を洩らしながら、丁寧にグレープフルーツの薄皮を
取り除いた。
「はい、あーん」
冗談めかして云いながら、果汁でべたべたになった手で、ナオさんの口元に
グレープフルーツを持っていく。
ナオさんはにやりと笑うと、雫に濡れた僕の手を舐めた。
「手じゃなくて、コッチ!」
笑ってナオさんの唇にグレープフルーツを押しつける。
ナオさんはグレープフルーツを僕の手から食べながら、しっかりと僕の手を
掴んだ。
「なに?」
手を掴まれて、警戒する。
「ジュースが勿体ないから、ね?」
ナオさんはにっこり笑うと、ちゅっと音を立てて僕の指に口づけた。
「勿体なくない!こっちにまだたくさんあるのに!」
指先を甘く吸われる感覚に、僕は焦って手を引いたけど、ナオさんに強い
力で掴まれていて、思うように動かない。
ナオさんは僕の指を舐め、指を口に含み、時折音を立てて吸い上げる。
目を伏せて、僕の手に舌を這わせるナオさんの顔が、妙に色っぽくて、
思わず見とれる。
不意にナオさんが目線をあげた。
ナオさんに見とれていた僕と目と目が合うと、ナオさんは目だけで笑って、
僕に見せつけるように、指に舌を絡ませ、ゆっくりと音を立てて唇を離す。
「・・・・・はあ」
舌が離れた時、思わず溜息が出た。
「ごちそうさま」
云いながら唇を舐めるナオさんの仕草に、身体の奥が微かに疼く。
「まこちゃんも食べる?」
目の前に差し出される、金色の果肉。
僕はナオさんを見つめたまま、誘われるように口を開けた。
ゆっくりと、口の中にグレープフルーツが差し入れられる。
口の中に広がる酸味に、喉の奥がきゅっとなる。
僕はグレープフルーツを飲み込むと、ナオさんの濡れた指をそっと舐めた。
ナオさんから視線を逸らして、ゆっくりと舌を絡める。
さっきナオさんが僕にしたように、指に舌を這わせてから、舌先で爪の固さを
確かめる。
指先だけを口に含んで、第一関節を軽く噛む。
噛まれたナオさんの指先が、僕の舌を軽く撫でる。
僕は指先を軽く吸い上げて、唇を離した。
俯いて、一旦息を吐く。
これ以上、続けていたら・・・・
僕は顔をあげて、ナオさんを見つめた。
一瞬、視線が絡み合う。
ナオさんの手が僕の肩を優しく押すのと、僕の腕がナオさんの首に回され
たのは、ほぼ同じ。
「やっぱりヤりたくなったよね」
僕を床に押し倒しながら、ふふっと笑うナオさんの吐息が耳に掛かる。
僕は答えるかわりに、ぎゅっとナオさんを抱きしめた。

さっき着たばかりの服を脱ぎ捨てて、明るい陽の元に素肌を晒す。
ひんやりと濡れた手が、僕の素肌に触れた。
こんな昼間から事に及ぶのは初めてで、なんだかどきどきする。
「まこちゃん。口あけて」
上から僕を見下ろして、ナオさんが頬を撫でる。
僕は云われるままに、薄く唇を開いた。
そっとナオさんの唇が近づいてきて、触れた途端に甘酸っぱい味が舌の
上に広がった。
「ん・・・・」
グレープフルーツの味のする、ナオさんの舌が滑り込んで、僕の舌に絡み
つく。
僕はナオさんの首に腕を回しながら、ゆっくりとナオさんを味わった。
ナオさんの舌を甘く吸って、軽く噛んでやる。
するりと舌が逃げていって、お返しとばかりにきつく舌を吸い返された。
果汁と唾液がまざりあって、濡れた音が部屋に響く。
僕は喉を鳴らして、甘酸っぱいジュースを飲み下した。
濡れた唇を辿るように舐めて、ナオさんの口がそっと離れる。
ゆっくりと離れていくナオさんの顔が名残惜しくて、僕は手を伸ばして
ナオさんの頬を撫でた。
「僕も、ナオさんにあげる」
手探りで、テーブルの上に手を伸ばす。
指に触れる、冷たい感触。
グレープフルーツを盛った、ガラスの器。
僕はその中から大きめの一房を摘み上げると、ナオさんの唇へと
持っていった。
果汁が滴って、僕の腕を伝う。
ナオさんは僕の手からさもうまそうに、少しずつグレープフルーツを食べる。
ナオさんが一口食べる度に、果汁が滴り、飛び散って、ナオさんと僕の胸を
濡らす。
ゆっくりと全部を食べ終えたナオさんが、丁寧に僕の手を舐めた。
濡れた指先から手のひらへと舌を滑らせ、果汁が伝った後を辿って、腕を
舌が貼っていく。
腕の内側の柔らかい部分に、ナオさんが軽く歯を立てる。
「んっ」
思わず声が漏れた。
「痛かった?」
ナオさんが心配そうに僕の顔をのぞき込む。
僕は慌てて首を振った。
痛かったんじゃなくて・・・
言葉にはしなかったけど、ナオさんはちゃんと分かったようで、小さく笑うと
薄く歯形の付いた場所に、きつく口づけて跡を残した。
首筋に顔を埋めて、ナオさんが思いきり息を吸い込む。
「まこちゃんはすごくイイ匂い」
肩口に鼻を埋めて、ナオさんが甘く耳に囁く。
ぞくりとした感触に、僕は思わず首を竦めた。
胸に落ちた果汁を舐め、ついでのように胸の尖りを舌でつつく。
僕はぎゅっとナオさんの肩を掴んだ。
「キモチイイ?」
ナオさんは僕に聞きながら、胸を下から持ち上げるように舐める。
僕は答えなかったけど、身体が勝手に返事をしていた。
僕の胸は、ナオさんの舌の先で小さく勃ちあがって、ピンク色に濡れている。
ナオさんは勃ちあがった僕の胸の先を指で摘みながら、唇を徐々に下へと
下ろしていった。
「こんなとこまで、ジュースが飛んだ?」
ナオさんが、からかうように云って、すっかり勃ちあがった僕のモノを指先で
撫でる。
「と、飛んだ・・・んじゃないかな?」
触れられてもいないのに、濡れている自分のモノが恥ずかしくて、
僕は小声でぼそぼそ云った。
「ふうん」
ナオさんが云いながら、にやりと僕の顔を見る。
僕は顔を赤らめて、ナオさんの顔を睨んだ。
「ナオさんのトコにだって、飛んでるじゃない!」
さっきから、太ももに熱く濡れたナオさんのモノが時折触れている。
「わはは。バレたか」
ナオさんは笑って、僕の手を引く。
引かれるままに起き上がると、ナオさんは音を立てて僕の額に口づけた。
「じゃ、二人でキレイにしよっか」

「ぜっっったいヤダっ!こんなん恥ずかしい!ヤダってば!!」
じたばたと抗う僕の足を、ナオさんが掴んで引っ張る。
「いいから、やってみろってば」
ナオさんは、強引に僕の足を押さえ込んだ。
「うう・・・」
押さえ込まれて動けない僕の目の前には、ナオさんのモノがそそり立って
居る。
そして、ナオさんの目の前には・・
「ひゃっ!」
ぬるりと後ろに舌が這う。
僕の後腔が晒されていた。
「ほら、舐めて」
ナオさんが、軽く腰を揺らす。
僕は観念して、目の前のモノを両手で掴むと、そっと舌を寄せた。
取り敢えず、今自分がしている格好を考えるのは止めておこう。
考えると、恥ずかしくて死にそうになる。
僕の太ももをしっかり掴んだナオさんが、音を立てて後ろを舐める。
後ろから聞こえてくる濡れた音を聞きたくなくて、僕はわざと音を立てて、
ナオさんのモノをしゃぶり立てた。
後ろと前から響く違った濡れた音が、絡み合って部屋の中で響き合う。
ナオさんは僕の尻を両手で割り広げると、後ろに舌を差し入れた。
「んあっ!」
柔らかい舌が、ゆっくりと後ろを押し広げる感覚に、堪えきれずに嬌声を
洩らす。
一度、声を立ててしまったら、歯止めが利かなかった。
「あっ、あっ、あ・・・ふぁっ・・」
ナオさんの舌が出入りする度に、絶え間なく嬌声を洩らす。
ちゅぷちゅぷと音を立てて、ナオさんが唾液を僕の中へと流し込む。
「まこちゃん。お口がお留守やよ?」
ナオさんは舌を引き抜きながら、笑い混じりに僕に云った。
「だって、もう・・・」
ナオさんのモノを握りしめたまま、僕は泣き言を洩らす。
「あとちょっと、ガマンガマン!」
ナオさんは、僕の尻を軽く叩いて、後ろへと指を突っ込んだ。
「っ・・・・」
二本同時にねじ込まれた指に、一瞬息が詰まる。
ゆっくりと中を掻き回される感触に、僕は背筋を震わせた。
再び、ナオさんのモノに唇を寄せる。
根本から、先端まで、舌で舐め回す。
早く、コレが欲しかった。
熱く張りつめたコレで、思いきり突き上げて欲しい。
後ろを掻き回す指は、僕のポイントをわざと外して蠢いている。
あと、ちょっとの刺激でイけるのに、最後の一押しが足りない。
僕のモノはとろとろと先走りの蜜をこぼして、ナオさんの手を濡らしていた。
「まこちゃん。誘ってるの?」
無意識のうちに揺らしていた腰を撫でられる。
僕はガマンできなくて、半ばやけになるとナオさんの目の前で、自分から
腰を揺らして見せた。
「誘ってる。だから、もう・・・・」
その先は言えなくて、僕はナオさんのモノを強く握った。
「挿れるね!」
ナオさんは明るく笑って云うと、僕の尻に音を立てて口づけた。

後ろから、一気に貫かれる。
「んああああっ!」
待ち望んでいた感覚に、前が弾ける。
吐精して、力が抜ける僕の腰をナオさんはしっかりと掴んで、
激しく腰を突き立てた。
ガマンできなかったのは、僕だけじゃなかったのが、ナオさんの余裕無い
動きと、荒い呼吸で分かる。
僕は息を整えて、腕をついて身体を支えた。
途端に突き上げの角度が変わる。
感じるところを狙ったように、ナオさんの先端が抉る。
息も出来ないほどの快感に、僕の背中がぐぐっと反った。
さっき放ったばかりなのに、たちまち僕のモノは頭をもたげ始める。
身体を倒したナオさんが、僕の肩を甘く噛んで、耳に囁く。
「まこ」
名前を呼ぶその声はうっとりするほど優しくて、僕はとろりと溶けてしまった。
首を捻った苦しい体勢で、ナオさんと貪るような口付けを交わす。
柔らかくとろけた僕の身体を、ナオさんは思うさま突き上げた。
「も・・・・そろそろ・・」
余裕無く掠れたナオさんの声に反応して、思わずぎゅっと後ろを締めてしまう。
「くっ・・・」
一際奥を抉ったナオさんは、最奥に迸りを叩きつけた。
身体の奥にじわりと広がる熱い感触に、僕も二度目の精を放つ。
「は〜」
「ふ〜」
二人で同時に息をついて、僕らは床にくずおれた。

「今日やりたいこと、決まった」
床の上で抱かれたまま、ぽつりと呟く。
「ん・・・なあに?」
胸の中に抱いた僕の顔をのぞき込んだ、ナオさんの耳に口を寄せる。
「大掃除」
ナオさんは一瞬きょとんとした顔をして、それから床に目を落とした。
床の上は、僕の放ったモノと、こぼれたグレープフルーツの果汁で、どろどろ
のベタベタだ。
「了解」
二人で顔を見合わせて、笑う。
今日の午後は、忙しくなりそうだ。

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