よく晴れた日曜の午後。
やわらかな春風は、どこかイイ匂いがする。
僕はうきうきした気分でナオさんの家へ向かった。
「なーおーさん」
玄関を開けて呼ぶと、ナオさんが部屋の奥からすっとんできた。
「まこちゃん!いらっしゃい」
ぎゅうぎゅう抱きしめられて、髪やら頬やらに口付けが落とされる。
「一週間、お世話になります」
ナオさんの胸の中から見上げて云うと、ナオさんはにっこり笑った。
「こちらこそ」「それにしても、お父さんも大変やねえ」
のんびりこたつ机でみかんを剥きながらナオさんが云う。
「でも、2ヶ月だけで良かったよ」
僕の父親は、今アメリカに行っている。
2ヶ月間の単身赴任。
突然の会社命令だった。
一人では何もできない父親を心配して、僕が春休みになるのを待ち、
母親も一週間の有給を取って、今日父の元へと向かった。
「まこ、一人でほんとに平気?」
春休みだけど補習があるから留守番してる、と云った僕を、
頻りに心配する母親を、大丈夫だよ、と笑顔で送り出して、僕は勿論
ナオさんのところへやってきた。
「一週間も一緒に居られるなんてわくわくするねえ」
ナオさんが嬉しくて溜まらない、といった顔をして、僕の口の中に
みかんを放り込む。
「でも、ナオさん学校あるんでしょ?」
僕がみかんをもぐもぐしながら、ナオさんの顔を見上げると、ナオさんは
そうだなあ、と宙を睨んだ。
「火曜日と木曜日は行かなきゃならないけど、ほかは大丈夫。ずっと一緒に
居られるよ」
ナオさんの腕が僕をぎゅっと僕を抱き寄せる。
僕はされるがままに身体を預けて、ナオさんの胸に頬をすり寄せた。
ナオさんの胸の中は、いつだってうっとりするほど暖かい。
じっと胸に頬をつけて目を瞑ると、ゆっくりとしたナオさんの鼓動が聞こえる。
ナオさんは穏やかな手で、僕の髪を撫でた。
「あとで、買い物行こうね。夕飯の」
のんびりと髪を撫でながら、ナオさんが云う。
「何が食べたい?」
僕はナオさんの肩に凭れたまま、顔を見上げた。
「そうだなあ・・・」
ナオさんの目が宙を泳ぐ。
食べたいものを考えるときのナオさんの顔はいつだって真剣だ。
「やきうどん!」
ナオさんはいかにも良いことを思いついたというように、顔を輝かせて云う。
僕は笑って頷いた。
「焼きうどんと?あとは?」
「あとはおまかせ!」
ナオさんは笑って云うとちゅっと頬に口づけた。
夕方二人で買い物に行った。
やきうどんと、豚汁と、かぼちゃのコロッケ(今日の夕飯のメニュー)の材料と、
あとはナオさんと僕がめいめい好きなものをかごに入れた。
ナオさんは、ポテトチップスコンソメパンチ・三色ゼリー・バニラアイス・
ホットケーキミックス・チョコレートシロップ・ポテロングのスモークチーズ(新発売の)
・チキンラーメン・アロエドリンク・こんにゃくゼリー・タラの切り身を。
僕は、食パン(厚切りの)・白ワイン(安いやつ)・グレープフルーツ・プレーンヨーグルト・
クリームチーズ・とろけるチーズ・桜の葉の塩漬け・マリービスケット・餅米・上白糖・
板チョコ2枚(普通のと、ホワイトと)・エリンギ・メイプルシロップを。
初めはナオさん一人で持っていたかごが、いっぱいになって随分重そうだったので、
僕が片方を引き受けた。
かごを二人で持ちながら、買い忘れがないかどうか、店内をくまなく見て回る。
「ね、まこちゃん。コレ作って?」
立ち止まったナオさんが棚からプリンミックスをとって僕に見せた。
箱の裏に、大きく作った(たぶん普通のプリンの4個分)写真がのっかっていて、
ナオさんはそれが気になるらしい。
僕らは最後にそれをかごに放り込んで、レジへと向かった。
夕飯は、ナオさんに手伝って貰いながらゆっくり作った。
どうしてゆっくりなのかというと、ナオさんに手伝って貰ったからで。
ナオさんの包丁さばきはそれは凄まじく、見ているととても怖い。
魂を込めるかのごとく真剣な顔でまな板に向かっているのだが、
やっぱりナオさんは料理に向いていないみたいだ。
それでもナオさんは結構楽しかったようで、自分が作ったご飯はおいしい、
と満足げな顔をして食べていた。
「あ〜、うまかった」
幸せいっぱいの顔で、ナオさんが息を吐く。
「美味しかったねえ」
二人で洗い物をしてから、のんびりとお茶を飲んだ。
いつもより、ずっとゆっくり流れる時間。
満ち足りているのは、きっと胃袋だけでは無い筈で。
僕はテーブルに肘をついて、斜め横のナオさんの顔を眺めた。
「なあに?」
視線に気づいたナオさんが、話を止めて僕の顔をのぞき込む。
「なんでもない」
僕はなんだか恥ずかしくなって、目を逸らした。
「なんだよ〜」
笑いながらナオさんが手を伸ばす。
「なんでもないったら」
ナオさんの手から逃れようと、笑いながら身体を捩る。
「逃がすか!」
云うなりナオさんが飛びついてきた。
そのまま床に押し倒されて、そこら中をくすぐられる。
「やだ!やめてったら!くすぐったいっ!ひゃっ!」
くすぐったがり屋の僕は、床を転げ回って笑ってしまった。
「逃げたバツだ」
ナオさんはいじわるく笑いながら、擽る手を止めようとしない。
笑いすぎて呼吸困難に陥りかけたころ、ようやくナオさんの手が止まった。
「まこちゃん、ほっぺたが真っ赤」
荒く息を吐く僕の頬を、ナオさんの指先が撫でる。
「髪もくしゃくしゃ」
優しい指先が髪を梳く。
「目が潤んでる」
笑いすぎて目の端に滲んだ涙に、そっと唇が寄せられる。
舌がするりと目尻の涙を舐め取って。
僕は近づいたナオさんの背中に、腕を回して抱きついた。
「まこちゃん、すごい色っぽい顔」
息が掛かるほどの距離で、ナオさんが熱く囁いた。
ぞくり、と背筋に快感が走る。
「擽られて、感じた?」
いつもと違う声で、耳元に囁かれる。
実際そのとおりだったので、僕は赤くなって顔を背けた。
「まこちゃんは、ほんとに可愛い」
ナオさんが、僕の髪を撫でながら目を細める。
僕はナオさんの首にしがみつくように手を回して、キスをねだった。
ちゅっ・・・・・と小さい音を立てて、口付けが落とされる。
啄むように繰り返される浅い口付けに、僕はじれったくなって、唇を開いた。
薄く開いた唇から、ちろりと舌を覗かせると、ナオさんの舌がつられるように
中に滑り込んでくる。
僕はぎゅっとナオさんに抱きついたまま、自分から舌を絡めた。
ナオさんの舌もすぐに応えて絡め返す。
「ん・・・・」
とろけるような口付けの心地よさに、僕はうっとりと目を閉じて甘い鼻声を洩らした。
時折濡れた音を立てて絡み合う舌と舌。
長い長いキスをして、ナオさんの唇が離れる頃には、僕はすっかり熱くなっていた。
「はあ・・・・」
小さく息を吐いて、ナオさんを見上げる。
ナオさんの目をみれば、熱くなっているのが僕だけでないのが分かる。
ナオさんがそっと目を伏せて、僕の肩に顔を埋めた。
くんくんといぬみたいに鼻を鳴らして首筋に鼻先を押しつける。
くすぐったくて身を捩ると、ナオさんの手が裾から滑り込んできた。
暖かな手が素肌の上を滑っていく。
脇腹を撫で、胸を滑って鎖骨を撫でる。
「服、邪魔やね」
ナオさんがすぽんと僕の服を剥ぎ取ってそこらにほおる。
「ナオさんのだって邪魔だよ」
僕がナオさんの服に手を伸ばすと、ナオさんは笑って自分から服を脱ぎ捨てた。
服を脱ぎ捨てたナオさんが、再び僕に覆い被さって、首筋に軽く口付けを落とした。
素肌が触れ合う感触に、思わず溜息が洩れる。
ナオさんの唇が、僕の体中に落とされる。
「いっ・・・」
ちくりとした痛みに顔をしかめる。
ナオさんが音を立てて唇を離すと、まっかな跡がついていた。
「たまには、ええやろ?一週間も経てば消えるし」
僕の肌に舌を這わせながら、ナオさんが僕をみあげてにやりと笑う。
僕は赤くなりながら、小さく頷いた。
ぴちゃぴちゃと絶え間なく濡れた音がする。
露わにされた下肢に、ナオさんのぬめる舌が這う。
「ひゃっ・・・」
手を舐められて力が抜ける。
「あとちょっと。ちゃんと持ってて」
力の抜けた僕の手を、ナオさんがしっかりと膝の裏に押しあてる。
僕は仕方為しに、自分で自分の足を抱えて、恥ずかしい格好で下肢を晒した。
「ん。良い子だ」
ナオさんは上機嫌で僕の膝頭に口づけると、再び下肢に顔を埋める。
さんざん口で愛撫された僕のモノはとうに天を仰いで、ナオさんの唾液と、僕の
先走りとで、ぬるぬると光っていた。
ナオさんの舌は、更に後ろへと滑って、僕の入り口をつついている。
僕は羞恥と快感に堪えきれなくて、首を振った。
尖らせたナオさんの舌が、僕の中にねじ込まれる。
「う・・・」
身体の中に、柔らかな異物が入り込む奇妙な感触に、僕は小さく呻いた。
襞の一つ一つを舐めるようにして、ナオさんが丁寧に後ろを舌で解していく。
「もう、とろとろ」
濡れた唇を舌で舐めながら、ナオさんが笑って顔をあげた。
「は、ずかしいこと云わないでよ・・・」
イヤらしい顔をして笑うナオさんをにらみつける。
「んなことゆったって、事実なんやも」
ナオさんの指が柔らかく解れた後ろに二本揃えてねじ込まれる。
自分ではよく分からないけど、実際とろとろなんだろう。
指が中で動く度に、ぬちゃにちゃと濡れた音が耳まで届く。
「ね?」
・・・・・・・ね?って云われても・・っ!
僕は真っ赤になった顔を隠すために、だるくなった手を離して、
ナオさんの首に手を回した。
「もう・・・して」
ぎゅっとしがみついて、小声で囁く。
自分の声とは思えないほど、甘くとろけた甘え声。
ナオさんは僕の髪に口づけると、ぎゅぎゅっと僕を抱きしめた。
ゆっくりとナオさんが僕の中に入ってくる。
ナオさんの熱さと形を身体で感じる。
「ふ・・・・・」
根本まで僕の中へと納め終えると、ナオさんは満足げに息を吐いた。
「は・・・・・」
身体いっぱいに満たされた僕の口からも、小さく溜息が洩れる。
ナオさんは僕の髪を撫でてから、そろそろと腰を動かし始めた。
根本まで引き抜いて、一気に奥まで突き上げる。
がくん、と僕の背がのけぞった。
足を抱え上げて、僕の身体を二つ折りにするようにして、腰を突き入れる。
「んあんっ!!」
僕の一番感じる場所を、ナオさんが抉るように擦りあげて、僕は思わず声をあげた。
「可愛い声」
ナオさんが低く笑って耳に囁く。
「もっと聞かせて?」
耳たぶを甘く噛みながら、緩慢に腰を揺する。
僕はもっと刺激が欲しくて、両足をナオさんの腰に絡めた。
引き寄せられるように、ナオさんの腰が一層奥を抉る。
「あ、あ、あっ、あっ、あ、あん!!」
ナオさんの腰がリズムよく奥を穿つのに会わせて、僕の口から声が漏れる。
僕はナオさんにしがみついて、張りつめた自身をナオさんの下腹部に擦りつけるように
腰を揺らめかせた。
僅かに動く僕の腰の動きに合わせて、ナオさんが腰を使う。
「も、イき・・たいっ!」
強い刺激に頭の中が白くなる。
ナオさんの背にぎゅっと爪を立てると、ナオさんの手が腹の間の僕を握り締めた。
「いっといで」
のんきに云いながら、ナオさんの手が強く僕を扱き、先端を擦る。
「ああぁああぁ」
僕はナオさんの背中にしがみつくようにしながら、思いきり白濁を放っていた。
びくりびくりと痙攣したあと、体中から力が抜ける。
ナオさんは力無くへたった僕の腰を支えながら、2.3度大きく奥へと突き上げる。
「ん・・・・」
きつく抱きしめられると同時に、身体の奥へナオさんの白濁が迸った。
ぐったりとした僕を抱えて、ナオさんがベッドへと運ぶ。
そっとベッドに僕を下ろし、柔らかな羽布団をふわりと掛ける。
僕はベッドの中からナオさんの手を引っ張った。
「一緒に寝よう」
今にも落ちそうな瞼で、うっとりとナオさんを見上げる。
ナオさんは笑ってとなりへ潜り込んだ。
暖かなナオさんの胸へと身体を寄せる。
柔らかく抱きしめられて、とうとうとろりと瞼が落ちた。
「おやすみ。まこ」
髪に口付けが落とされる。
(おやすみ、ナオさん。また明日)
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