「ここが・・・・アリス?」
ナオさんに連れてこられたホテルの部屋について、僕は絶句した。
「そ。2作目の方ね〜」
ナオさんは平然と云うと、中心に添えられた大きなベッドにばふんと
ダイビングした。
僕は唖然としたまま、部屋を見回した。
至る所に、自分が見える。
つまり、この部屋は鏡張りだった。
床はこげ茶とうす茶のチェッカー模様になっている。
僕が入り口に突っ立ったまま、呆然としていると
ナオさんはベッドから起きあがり、部屋の中を見回しながら云った。
「ラブホテルって僕も来るの初めてなんやけど、おもろいね〜」
そして、僕の側にやってきて突っ立ったままの僕を両手に抱え上げる。
「ぅわっ!」
浮遊感にあわてて僕はナオさんの首にしがみついた。
こんな風にだっこされたのは、記憶にある限り初めてで、なんとなく
気恥ずかしい。
顔を伏せていたら、
「えーいっ!」
ベッドの脇まで僕を抱えてきたナオさんがいきなり僕をベッドの上に
投げたので、僕はベッドの上で大きくバウンドした。
「乱暴!!」
ベッドの上から軽く睨むと、宥めるように額にキスが落とされた。
そっと目を閉じてキスを受ける。
額から、まぶたに。
まぶたから、頬に。
頬から、唇に。
ナオさんの唇が順々に降りてくる。
そっと唇を舐められて、舌先で歯列が割られる。
僕は大人しく口を開いて、ナオさんの舌を受け入れた。

舌をあっと言う間に絡め取られて、きつく吸われる。
「ん・・・・・っ」
鼻から甘い声が抜ける。
ナオさんは吸い上げた僕の舌を甘く噛み、ゆっくりと離す。
舌を解放されてほっとする間もなく、ナオさんの舌先が口中を
くまなく蠢いていく。
歯列を辿り、上顎を擽り、舌裏を舐めて。
僕は相変わらずキスが下手で、ナオさんにうまく応えることができなくて
ただ口を開けて喘いでいるだけだった。
ナオさんの唇がそっと下唇を吸いながら離れる。
「まこちゃん可愛い」
ナオさんはこういうと、もう一度ちゅっと音をたてて口付けた。
「どうする?このまま一度ヤっちゃう?それともお風呂入る?」

−−−−−−−−−−−どっちがイイ?−−−−−−−−−−−−

「このまま・・・・する」
僕はナオさんの首に腕を絡めると小さい声で呟いた。

「お風呂、入りたいな」
僕がこういうと、ナオさんは頷いて僕をよいしょと抱え上げた。

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