dark novelette

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□人研修


 早速今日から研修だ、と連れてこられたのは、会社からほど近いマンションで、その一室が僕に割り当てられた仕事場だった。
「まず、脱いで」
 部屋に入るなり言われて、僕は正直戸惑った。
 部屋の入り口で突っ立っている僕を後目に、部長は冷蔵庫から酒を出し、ソファへどっかり腰を下ろす。
 ほんの数十分前まで、僕は会社勤めをする心構えでいたのに、いきなり愛人になれと言われて、平気で居られるわけがない。
「どうした?さっさと脱がないか」
 苛立った声で言われて、僕は仕方なしに服に手を掛けた。
 研修中は普段着で構わない、と聞いていたので、普通のシャツにズボン、それに一応少しあらたまって、ジャケットを羽織ってきている。
 僕は取り敢えず、ジャケットを脱ぐと、手近にあった椅子の背に掛けた。
 これから何をされるにせよ、これは手始めに過ぎないのだからと割り切って、順番に服を脱いでいく。
「あの…」
「何だ」
「靴下も、脱いだ方が良いんでしょうか?」
「無論だ」
 何もかも、脱ぐのか…。
 僕は、いつもどおりの順番で…先に靴下を脱ぎ、ズボンを下ろし、パンツを脱ぐ…一糸纏わぬ姿になると、身体を縮めて部長の前に立った。
「脱ぎました」
「手が邪魔だ。頭の後ろへ組んで」
 無意識に前を隠していた手を、黙って頭の後ろで組む。
 なんだか変な気分だ。
「もっと、近くへ」
 手招きされて、僕は部長の手が届く程の距離へと移動した。
 途端に部長の手が伸びてきて、僕の素肌に触れた。
 記憶にある限り、こんな風に他人に触れられたことは無い。
 普段、衣服に覆われた場所を、人前に晒して、更に接触を受けるのは、気持ちが悪かった。 部長の手は、汗ばんでいて熱く、僕の肌をまさぐるように執拗になで回す。
「思った通りだ。肌理の細かい、良い肌をしてる…。色も白いし、手触りも悪くない…」
 ぞわり、と鳥肌が立った。
「ココの色も良いね。淡いピンクで…実に可愛らしい」
 きゅっと指先で乳首を摘まれて、僕の身体がびくりと震えた。
「それにココ。まだまるで子どもじゃないか」
「ひっ」
 いきなり股間に手を伸ばされて、僕は思わず身体を縮めた。
「童貞か?」
 僕のモノを手の中でもてあそびながら、部長が聞いてくる。がくがくと頷くと、部長は更に質問を浴びせてきた。
「オナニーは?毎日ちゃんとしてるか?」
「し、て…ません」
 膝が震えて、まともに立ってられない。
「ふうん。これから開発するのが楽しみだな」
 独り言のように呟きながら、部長はようやく僕の身体から手を離した。
 どっと汗が噴き出てくる。心臓がすごい勢いで鳴っていて、なんだか気持ちが悪くなってきた。
「床に手をついて」
 身体の不調に気を取られていたせいで、部長の言葉が耳に入ってこなかった。
「…っつ」
 大きな音と共に、尻を平手で叩かれて、我に返る。
「言われた事にはすぐ反応しろ。何をぼんやりしてるんだ。床に手をつけ!」
 叩かれた部分が、熱を持ち始めているのを感じながら、床にかがみ込む。
 抵抗も、反抗も、昔から苦手だった。ただひたすら言うことを聞いて、大人しく、息を殺して生きてきた。でも、今自分がされていること、これからされるであろう事は、今までとは全く性質が異なっていた。
「……っ」
 今まで、自分ですら見たことの無い場所に、他人の視線が注がれている。
「色が白いから、手形が映えるね」
 部長は、嬉しそうな声で、僕の尻をなで回していた。
「ココ。これから君のココを、使えるようにしなきゃならない」
 指先で窄まりをつつかれて、僕は身体を震わせた。
「恥ずかしいのかい?ひくひくしてる」
 ふぅっと息が吹きかけられて、思わず背筋がぞっとする。
「こっちを向いて」
 軽く尻を叩いた部長に言われて、僕は床に這ったままのろのろと方向を変えた。
 ソファに掛けた部長の足先と絨毯をじっと見つめる。
 頭の上で、小さくかちゃかちゃと音がして、いきなり無造作に髪を掴まれた。そのまま、顔を上向かされる。
 目の前に突きつけられたモノに、僕は思わず目を見開いた。
「コレを、君の後ろに入るようにするんだよ」
 無理だ、と思う。本当に、無理だ。
 それは、今までに見たこともないような醜悪なモノだった。自分のモノと、同じ器官とは思えない。思わず目を逸らすと、頬に先端が擦りつけられた。
「口を開けて」
「え?」
 口を?
 逡巡する間もなく、唇に先端が割り込んでくる。唇に触れる湿って生温かな感触と、むっとする異臭に、無意識に顔がゆがむ。
「ちゃんと開けろ」
 ぐい、と髪を握る手に力が込められて、僕は仕方なしに口を開いた。閉じた瞼が震える。
「舌を出して。舐めるんだ」
 言われるがままに舌を出し、妙な味のするソレをぺろぺろと舐める。頭の上から、次々に指示が飛び、僕はただそれに従った。
「よし、良いぞ。口を大きく開けて…歯を立てるんじゃないぞ」
 僕自身の唾液で濡れた肉棒が、容赦なく口腔深くまで押し込められる。
 柔らかな喉奥を付かれて、吐き気に思わず涙が出た。
「唇をすぼめて、頭を動かせ」
 聞こえてはいるけれど、吐き気と息苦しさで、思考が働かない。動かない僕に、部長は小さく舌打ちをすると、乱暴に髪を掴んだまま、僕の頭を揺すり立てた。
 苦しくて、涙が次から次へと溢れてくる。頭を押さえつけられ、ほとんど窒息しそうになりながら、僕は絨毯に爪を立てた。
 口の中で、部長のモノが脈打ち、喉奥に熱い体液が注ぎ込まれる。
「全部飲んで」
 頭を押さえつけられたままでは、吐き出すこともかなわない。
 僕は苦労して、喉に絡むそれを飲み下した。
 僕の喉が何度か上下するのを見て、部長がゆっくり手を離す。喉奥からぞろりと出ていくモノに、僕はしゃくりあげながら、息をついた。
 胃がむかむかして、ともすれば吐きそうになる。
「苦しかったか?」
 涙に濡れた僕の頬を、部長の手が撫でた。
「はい」
 涙目で部長を見上げて頷く。
「苦しいのは、お前が下手だからだ。もっと巧くならんとな」
「はい」
 どうせしなければならないことなら、苦しくない方が良い。
「まあ、初めてにしては悪くない。お前には素質があるようだな」
「………」
 何の素質か知らないが、喜んで良いことなのだろうか。
 黙っていると、部長はさっさとズボンをあげて立ち上がった。
「こっちへ」
 言われて立ち上がろうとした途端、肩を蹴られる。不意打ちだったので、避ける間もなく僕は床に転がった。
「床を這ってこい。その方がペットらしくて良いだろう」
 ペットなのか、愛人なのかはっきりしてほしいところだったが、僕はすみません、と謝った。
 フローリングの床を、四つ足で這う。こんな格好をするのは、久しぶりだった。うんと小さい頃、弟を背中に乗せて乗馬ごっこをしたことを思い出す。
 連れてこられたのは、寝室のようだった。
 大きなダブルベッドにクローゼット。普段あまり使われていないのか、空気が淀んでほこりっぽかった。
 部長がクローゼットを開け、なにやら取り出しているのを、床に這ったままぼんやり見上げる。
「君に、課題を出しておく」
 ベッドの上に、次々と箱を投げ出しながら、部長が振り返った。
「水曜の朝十時までに、君の後ろを私が使えるようにしておくこと。それが課題だ」
 今日は月曜日。ほぼ二日間だ。
「そのための道具はいろいろ用意してある。好きなモノを好きなだけ使って、拡張しなさい」
 僕の動揺などまるで知らずに、部長は話をすすめていった。
「本当なら、私がじっくり調教がてらやりたいんだが、生憎忙しくてね。そんな暇が無い」
 部長は、バタンとクローゼットを閉じると、足下の僕を見下ろした。
「道具を使う前には、しっかり洗浄しろよ。私はそっちの趣味は無いのでね」
「あの、洗浄って…」
 道具を洗えという意味だろうか?よく分からなくておそるおそる問いただすと、部長は平然と口を開いた。
「勿論、君の穴の洗浄だよ。浣腸して、シャワーも使ってな。やり方が分からないなら、今ココで試してみるか?」
 そういってニヤリと笑う部長の顔が、おそろしい。僕は、小さく首を振った。
「いいえ」
「そうか。間違っても粗相するなよ。後が面倒だからな」
 部長は、楽しそうにすら聞こえる声でそう言い残すと、リビングに戻っていった。
「私は仕事に戻る。鍵は置いていくから、好きなときに帰って、好きなときに来ればいい。会社に行く必要は無い」
 もっと拘束されるのかと思っていたから、部長の言葉は意外だった。
「ただし」
 続けられた言葉に、顔をあげる。 
「期日までに使えるようにしておかなければ、後悔するのは君だ。私はけして容赦しない」
 そういう部長の目は、果てしなく冷たくて、僕は思わず怖気を震った。
 言葉の示す内容はよく分からなくても、きっと恐ろしいことになる、ということだけは想像がつく。
「一人でするのに限界を感じたら、ネットにでも頼るといい」
 部長は、そう言い残すと、部屋を出ていった。


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