「すっかり涼しくなったねぇ」
「うん。もう、秋だね」
買い物へ行った帰り道、僕らは散歩がてら、遠回りをして公園を歩いていた。
目にまぶしいくらいだった緑の洪水が、色あせてちらほらと散っている。
いつの間にか、すっかり日が落ちるのが早くなった。
お店に入る前は、まだ明るかったのに、買い物を済ませて外に出ると、もう薄暗くなっている。
「まこちゃん、ほら」
弾んだ声が指さす先を見上げると、ピンク色の夕焼け空。
「夏の夕暮れもええけど、秋の夕焼けはまた格別やね」
夕焼けを見上げる代わりに、僕はしみじみと云うナオさんの顔を見つめた。
僅かに唇の端をあげて夕焼けを見つめる横顔は、すごく優しくて、ほんのちょっと切なくなる。
ナオさんは何にだって優しい眼差しを向けるから。
その瞳で僕だけを見つめて、僕だけに優しくして欲しい…なんて我が儘過ぎて云えないもんね。
こんな事を思いながら、小さな声でうん、と頷く。
実際、夕焼けはすごく綺麗だった。
夏の燃えるような夕焼けとはひと味違う、穏やかな淡い色彩。
ナオさんの隣に立って、ぼーっと夕焼けの色が変わり、雲が動くのを眺める。
ふと、頬に指先が触れて、僕は我に返った。
「まこちゃんの顔、夕焼け色になってる」
そういうナオさんの顔も、夕焼けが反射して薄く朱に染まっている。
「ナオさんも」
僕は、手を伸ばして、ナオさんの頬に触れた。
温かな体温を、指先に感じる。
ナオさんは、そっと僕の手を掴むと、指先にちゅっと口付けた。
そのまま引き寄せられて、ナオさんの腕の中に収まる。
「はぁ」
ほっぺたに堅いナオさんの胸。
ぎゅっと僕を抱きしめるその腕の確かさに、思わず溜息が漏れる。
「こうしてると、すごく安心する」
僕が思っていたことを、ナオさんが口にした。
少しびっくりしたけれど、顔をあげずにそのまま黙ってナオさんの胸に顔を埋める。
「まこちゃんを独り占めしてるって、実感できる」
髪に落とされる口づけ。
僕は、たまらなくなって、ナオさんの首に腕を回すと、背伸びをして自分から口付けた。
すぐに、ちょっと激しいくらいの口づけが返ってくる。
「ん、ふ…っ」
舌を甘く吸い上げられて、僕は小さく声をあげた。
背中を撫でるナオさんの手が心地よくて、とろけそうになる。
「ん…」
ゆっくりと離れる唇に、名残惜しげに鼻が鳴る。
ナオさんは、もう一度ちゅっと音を立てて、僕の濡れた唇に口づけると、うんと甘い眼差しで僕を見つめて囁いた。
「早く帰ろ。ごはんもまこちゃんも、早く食いたくてうずうずする」
僕は、笑って頷くと、ナオさんの手を握って歩き出した。
速攻で出来るメニューを考える。
のんびり料理をしている余裕は、僕にもなさそうだった。

夕飯は、ふかふか卵乗せ中華飯と春雨スープ。
中華飯の素と中華スープの素を使った、手抜きメニューだけど、超っ早で出来る奴。
僕らはそれを、競うようにして食べると、片づけもそこそこにベッドへ雪崩れ込んだ。
服を脱ぐのももどかしく、身体を寄せ合い音を立てて口付ける。
こういうことは、たまにあった。
お互いに、気持ちを抑えきれなくて、言葉少なに、本能のままに絡み合い、荒々しいまでの愛を交わす。
「あぁっ」
あっという間に勃ちあがったモノを掴まれて、僕は思わず声をあげた。
軽く扱かれただけで、先端からとろりと蜜が溢れ出す。
僕は、大きく足を広げて、身を捩った。
腰のあたりにわだかまる熱。
ナオさんが、欲しくてたまらない。
僕は、腕を伸ばしてナオさんを抱き寄せた。
太ももに、ナオさんの熱いモノが擦れる。
その場所から、新たな熱が電流のように流れて、僕のモノは一層淫らに濡れた。
身体を起こし、ナオさんの太いソレを手に掴んで引き寄せる。
「んっ…」
ぺろりと先端を舐め、口に含むと、ナオさんの口から小さな声が漏れた。
乱れて頬にかかる髪を、ナオさんが優しく掻き上げ、手のひらで撫で付ける。
僕は、半ば夢中になって、ナオさんのモノを舐めしゃぶった。
舌を絡め吸い上げる度に、ぴちゃぴちゃと濡れた音がする。
ナオさんのモノは、あっという間に硬度と容積を増し、口に収まりきらなくなった。
唇から零れ出た先端が、ぬるりと頬に滑る。
もう一度銜えようと口を寄せた僕をやんわりと押しとどめて、ナオさんは僕を抱きしめた。
そのままベッドに押し倒されて、お返しとばかりに自身を口に含まれる。
「や…っ、あっ、あっ」
途端に、腰のあたりに重く淀んでいた熱が、開放を求めて暴れ出した。
もう、いくらももちそうにない。
僕は、ナオさんの髪に指を絡めて、声をあげた。
「ナオさん、挿…れてっ」
早く、ナオさんのモノが欲しかった。
身体の奥が、灼熱の塊を求めて疼いている。
それなのに、ナオさんは顔をあげなかった。
いやらしく腰を揺らし、挿入をねだる僕の足を割り拡げ、先走りと唾液で濡れるモノの奥へと、舌を伸ばす。
ひくつく後ろは、すぐにナオさんの舌を受け入れた。
硬く太いモノとはまるで違う、柔らかくぬめる舌がぬるぬると後ろを出入りする。
あまり慣れているとはいえない行為は恥ずかしくて、僕は腕で顔を覆った。
「まこちゃん」
舌が離れたかと思うと、顔の上で優しい声がした。
顔を覆っていた腕を外し、その腕を伸ばしてナオさんを抱き寄せる。
途端に、ぐいっと足が抱え上げられ、後ろに熱い先端が押し当てられた。
「あぁああっ」
一気に押し入ってくる待ち望んだ熱さに、僕は思わずナオさんの背中に爪を立て、思い切り背を反らした。

「は…っ、あぁ、な、おさんっ」
初めから勢いよく打ち付けられて、上下に身体がぶれる。
僕は、半ば夢中でナオさんにしがみつきながら、自分も腰を動かしていた。
快感に我を失いかけて、それを押しとどめる為に、何度も首を振る。
ぎゅっと瞑った目の端から、溢れ出た涙がこぼれ落ちて、シーツに小さな染みを作った。
「まこちゃん」
耳に届く囁き。
やんわりと耳朶を甘噛みされて、溶けてしまいそうになる。
ナオさんが動く度に、繋がった部分から濡れた音が響き、気持ちよさに頭がしびれる。
荒い息に途絶えがちな呼吸を整えようと、僕は仰け反って酸素を求めた。
その途端に、ナオさんの唇が首筋を這い、ところどころに赤い跡を残していく。
「はぁあ…っ」
僕はそのまま、ナオさんの首に腕を回して、口づけをねだった。
唇を甘く噛み、ぬめった舌が歯列を割って入り込んでくる。
絡ませた舌をきつく吸い上げられて、僕は思わず身体の中のナオさんのモノを思い切り締め上げた。
「…っ」
小さく眉根を寄せ、ナオさんが唇を離す。
締め付けた反動でか、ナオさんのモノが、より一層大きくなった気がする。
僕は、ずっしりと重い腰をわずかに揺らめかせて、ナオさんを誘った。
無意識なのか、ナオさんがぺろりと唇を舐める。
その仕草が、なんともいえずいやらしくて…そしてとてもナオさんらしい。
小さく笑みを漏らして、僕は全身でナオさんを受け止めた。
ナオさんの重み。
ナオさんの熱。
ナオさんの思い。
身体の奥に放たれる熱に、僕も身体を震わせる。
「…大好き」
「僕も」
顔を見合わせて、お互いにキスの雨を降らせあう。
僕らは、繋がったままぎゅうぎゅう抱き合って、くつくつ笑いを漏らした。
「もっかい?」
「勿論!」
一度じゃとても、この熱は収まりそうにない。
即答した僕に、ナオさんは笑って口付けた。