「お帰りなさい!」
帰ってきたナオさんに飛びつく。
「ただいま〜」
ナオさんは僕をぎゅうぎゅう抱きしめると、髪にいくつも口づけを落とした。
ひとしきり玄関でぎゅうぎゅうした後、ナオさんの頬に口付けて僕が離れると、ナオさんがにこにこしながら僕に紙袋を差し出した。
「まこちゃんにおみやげ!」
「おみやげ?」
ナオさんはときたま僕におみやげを買ってきてくれる。
大抵はやきいもとか、アイスとか、食べ物の事が多い。
でも、今日は食べ物じゃない・・・というより買ってきたものじゃないみたいだ。
手渡された紙袋をよく見ると、ナオさんの大学の名前の入った大きな茶封筒だった。
「なあに、これ?」
少しずっしりとした重さのある封筒を、そっと振りながらナオさんをみあげると、ナオさんは楽しくてしょうがないといった顔をして、僕の顔をのぞき込んだ。
「あけてみてごらん」
僕は少し躊躇した。
だって、ナオさんのこの顔ってよからぬ事をたくらんでる時の顔だし・・・
僕はナオさんの顔をちらりと見ると、内心どきどきしながら、そっと封筒を開けて中を見た。

中をのぞくと柔らかそうな光沢のある黒い布にくるまれたものがみえた。
おそるおそる取り出して、そっと布を広げていく。
「なっ、な、なにコレっ!!」
布の中から登場した物体を見て、僕は思わず大声をあげると、慌ててそれを包み直した。
「びっくりした?」
ナオさんの嬉しげな顔。
「機械科の奴に貰ったんだ〜。手作りなんやって!スゴイよねえ」
ナオさんが僕の手から包みを取り上げる。
「まだ、試作品やから是非使って感想を聞かせてって」
ナオさんがにっこり笑って僕を見る。
僕は真っ赤になりながら、震える指でナオさんの手に握られたモノを指さした。
「そ、それって・・・」
低いモーター音と共に、ナオさんの手の中のモノが卑猥に動き出す。
「バイブやよ」
ナオさんは蠢くバイブを持ったまま、満面の笑顔で僕に云った。


「やっ、ヤダ!ぜっったいヤダっ!!」
ベッドの上で、ナオさんに服を脱がされながら、僕はぶんぶんと首を振った。
「せっかく作ってもらったのに〜。機械科は文部省からいっぱい金貰ってるから、素材もすごくイイの使ってあるんやよ?中のモーターは最先端のやし」
ナオさんはバイブ片手に熱弁を振るう。
「教授と院生が面白半分に作ったヤツらしいんやけど、よく出来てるよねえ」
しげしげとバイブを眺めて、感心したように云うナオさんの手から、僕はバイブをひったくると、枕の下に押し込めた。
「こんな得体のしれないもの、絶対使うのヤダからね!」
枕の上に乗っかって、ナオさんを軽く睨みながら宣言する。
「どうしてもイヤなん?」
ナオさんがじっと僕を見た。
ものすごくがっかりした顔。
僕はナオさんのこの顔にすごく弱くて・・・ぐらりと来る。
「まこちゃんがイヤなら・・・無理にとは言わないけど・・・」
ナオさんはわざとらしく肩を落として呟いている。
・・・絶対、わざとだ。
そう確信してるのに、なぜかナオさんがかわいそうになってくる。
そんなに使ってみたかったのかな・・・?
あんなに嬉しそうに持って帰ってきてたし・・・
ナオさんの術中に嵌っているんじゃ・・・という声がどこからか聞こえる。
だけど僕はナオさんに抱きついていて・・・
「ちょっとだけね?」
小さくこう囁いていた。



「あ・・・・・っ!」
ナオさんの舌で、全身をくまなく舐められて、僕は既にとろとろだった。
首筋を舐めあげ、耳たぶを甘く噛み、鎖骨を辿って、胸が口に含まれる。
胸の尖りを舌先で転がされながら、下腹部を撫でられて僕は甘い声をあげた。
ナオさんの舌が、胸から下へと降りていく。
おへそを舐めて、足の付け根に口付けて。
既に立ち上がって濡れ始めている僕のモノにはわざと触れずに、そのまま太股へと唇を滑らせて。
柔らかな内股に口付けられて、真っ赤な痕が残る。
ナオさんは僕の足を抱え上げると、足の付け根からつま先まで、音を立てながら余すところなく口付けていった。
僕の感じる場所を知り尽くしているナオさんは、執拗にそこを攻めて、確実に僕を追いつめていく。
僕はいつしか我を忘れて、ナオさんの愛撫に乱れて声をあげていた。
「な・・・おさんっ!僕、も・・・・っ」
涙目でナオさんの手に縋ると、ナオさんは優しく笑ってそっと僕の髪を撫でた。
「もう・・・・なあに?」
ナオさんが、後ろに埋めた指をゆっくりと動かしながら、僕に聞く。
う〜〜、いじわるっ!!
ナオさんは普段はめちゃくちゃ優しいくせに、ベッドの上だと時にとことんいじわるで。
僕は真っ赤になりながら、ナオさんを涙目で睨みつけて口を開いた。
「も、挿れてっ!!」
云いながら手を伸ばして、ナオさんのモノに触れる。
そこは既に熱く硬く張り詰めていて、僕だけが追いつめられてる訳じゃない事がよく分かる。
それなのに、指を引き抜いたナオさんは、それを挿れてはくれなかった。
代わりに目の前に翳されたのは、すっかり存在を忘れていた・・・・・・・バイブ。
「今、挿れたげるからね〜」
ナオさんはにっこり僕に微笑むと、ローションをまとわりつかせたソレを、僕の後ろへと近づけた。
「や・・・・ソレじゃ・・・」
身体の中に入り込んできた異物に、言葉が途切れる。
ナオさんのモノよりは小型なソレは、僕の中になんなく飲み込まれていった。
「う・・・・」
ゆっくりと埋められて、身体が震える。
「どんな感じ?」
ナオさんの手が、ゆるゆるとバイブを出し入れする。
「つ、めた・・・い」
僕は息を乱しながら、ナオさんの顔を見上げた。
僕が欲しかったのは、こんな冷たくて無機質なモノじゃあ無い。
ナオさんの火傷しそうに熱くて硬いモノが欲しかったのに。
そう思ったら、涙が出てきた。
「まこちゃん!?」
ぽろり、と零れた涙にナオさんが慌てた声を出す。
僕は、うろたえるナオさんの首に手を伸ばすと、ぎゅっと抱きついて囁いた。
「こんなん・・・じゃ、ヤダ。ナオさんのがイイ」
途端にナオさんの身体がびくりと震えた。
あっという間にバイブが引き抜かれて、代わりに熱く滾ったナオさんのモノが押しつけられる。
そのまま一気に貫かれて、僕は嬌声をあげながら仰け反った。
待ち望んだ熱さに、身体を内から灼かれる。
「あっ、あっ、あっ、あぁっ、ん、・・・・んぅっ!!」
すさまじい程の快感に、僕は鼻にかかった声をあげてナオさんの背に爪を立てると、あっという間に放っていた。
僕とナオさんの間が、熱い飛沫で濡れる。
脱力する間もなく、きつく腰を突き上げられて、ナオさんの背中にしがみつく。
ナオさんは、僕の足を抱え上げると、角度を変えて僕の中をきつく抉った。
寸分違わずポイントを貫かれて、一瞬目の前が白くなる。
過ぎた快感に、僕は声をあげることすらできずに、口を開けたまま、ひくひくと身体を震わせた。
一度放った筈の僕のモノが、いつの間にか立ち上がって、絶え間なく蜜を零している。
一番感じるポイントを小刻みに突かれて、あまりの快感に涙が出てくる。
「ナオさん!も、ダメ・・・いっ・・・」
唇の端から、唾液を滴らせながら、舌足らずな声でナオさんに訴えると、ナオさんは目だけで笑って、涙に濡れた僕の頬をぺろりと舐めた。
「今度は一緒にイこ」
抱きしめたナオさんに囁かれて、答える代わりにぎゅっと首にしがみつく。
ナオさんの突き上げに逢わせて、自分でも腰を揺らめかせ・・・。
「んあああっ!!」
一際奥を抉られて、僕は再び白濁を放った。
同時にナオさんが、僕の中へと迸りを叩き付ける。
「まこ」
ぎゅうっと抱きしめられながら、小さく名前を呼ばれて、僕は大きく息を吐くと、ふっと意識を飛ばしてしまった。

「まこちゃん!まこちゃん!」
ぴたぴたと頬を叩かれて、うっすらと目を開けると、ナオさんの大きな手が、そっと僕の髪を掻き上げた。
「大丈夫?」
心配げにのぞき込む顔に、ぼんやりしたままこくりと頷く。
ナオさんはちゅっと音を立てて、僕の額に口づけると、胸の中にぎゅっとぼくを抱きしめた。
「まこちゃんってば、ホントに可愛い」
僕の髪を撫でながら、ナオさんがしみじみと呟く。
可愛いなんて台詞は、もう何百回も聞いているけど、しみじみと云われると妙に恥ずかしくなって、僕はナオさんの胸に顔を埋めて顔を隠した。
ナオさんの匂いを胸いっぱいに吸い込んで、汗ばんだ胸にぎゅっと頬を押し当てる。
優しい指先が、そっと髪を梳くのが気持ちいい。
僕は、ナオさんの胸に抱かれたまま、うっとりと目を細めた。
ナオさんが、僕の髪を撫でながらうとうとと微睡んでいる。
僕はすっかり満ち足りた気持ちで、ナオさんの胸にひとつ口づけると、ゆっくりと瞼を閉じた。

床の上には、ナオさんに放り投げられたバイブが、濡れたまま転がっていた。
ナオさんに、再び使われる日を待ちながら・・・。


■■あとがきちゃん■■
「あまあまでちょっと鬼畜」なナオさん、というリクを頂いて速攻で書き上げました(笑)
やっぱり、ここはお道具使ってみましょう!と気合いを入れて書き始めたのだけど、まこちゃんに泣かれて、結局スイッチを入れることなく終わってしまったのが、ひっじょうに残念・・・。スイッチオンなお話はまた別で書こう・・・と密かにたくらんでいます(笑)
こんなお話で良かったんでしょうか・・・?心配です。すごく心配です・・・(ドキドキ)