宗介の口淫はいつも丁寧そのものだ。
根元から先端まで、全体を余すところなく舐め尽くし、尖らせた舌先で私の感じる場所を擽る。
裏筋を辿り、先端を突つき、とろりと先走りが溢れ出すと、じゅるりと卑猥な音を立ててそれを啜った。
「んっ、んっ」
小さく喉を鳴らしながら、喉奥まで私を飲み込み、一心に頭を振る。
うすあたたかな口腔に含まれ、絶え間なく絡みつく舌に、私は見る間に自身を滾らせた。
上目遣いに私を見上げる視線が、うっとりと潤んで涙目になっている。
私が、溢れた唾液で濡れた顎を指先で拭い、頬を包むようにして撫でてやると、宗介は小振りの尻を揺らしながら、一層激しく舌を蠢かせた。
「飲みたい？」
「うんっ、の、飲む…っ」
何度も頷き、宗介はなおも激しく私のものをしゃぶりたてる。
私は、宗介の舌技に思考を蕩かせながら、宗介の柔らかな猫っ毛を指先で梳いていた。
くびれを何度も舌先が辿り、溢れ出す先走りを啜るように、先端がきつく吸い上げられる。
こみあげる射精感をこらえることもせず、「出すよ」と一言告げると全てを放った。
久しぶりの射精は長かった。
自分でも驚くほどの量が、宗介の口中へ溢れかえる。
宗介は陶然とした表情で、赤い舌に私の白濁を絡ませると、何度も喉を鳴らして飲み込んだ。
「はぁ…」
小さなため息を満足げに漏らしながら、私の逸物を清めるように何度も舐め上げる。
「満足したか？」
唾液に濡れた頬を撫で、指先で顎を持ち上げると、宗介は首を振って尻を揺らめかせた。
「まだ、まだ欲しい」
言いながら、再び私のものを銜える。
「良いよ。好きなだけあげる」
私の言葉に、宗介は嬉しげに喉を鳴らして、唇を窄めると顔を上下させながら私の物を吸い上げた。
「離して」
軽く髪を引いて言うと、宗介は名残惜しげに舌を絡ませながら、ゆっくりと私のモノから唇を離した。
勃ちきったモノが、宗介の唾液にまみれて、てらてらと光を弾き、いかにも卑猥に見える。
宗介は濡れた唇を半開きにして、うっとりとそれを見つめていた。
「欲しいかい？」
見せつけるように、宗介の頬に先端を押し付けると、宗介は声もなく何度も頷いた。
「後ろを向いて」
宗介は、言われるがまま、ベッドの上に仰向けになると、大きく足を割り広げ、私の前に全てを晒した。
中途半端に飛び出たディルドが、ゆらゆらと不安定に揺れている。
「あぁっ、いや、あ…っ」
私の手が、異物を動かすと、宗介は悲鳴のような声をあげて、身体を震わせた。
さっき自分でしていた時は、意図的に避けていたであろう、宗介の感じる場所を狙って、ディルドを突きたてる。
「やだ、やだ…っ」
宗介はいやいやをするように、何度も首を振ると、きつく自身を握った。
「お願い、ちょうだい。豊さんが、豊さんがいい…っ」
叫ぶように言いながら、ぼろぼろと涙をこぼす。
いたく嗜虐心をそそる姿に、私は少し迷ったが、結局欲望に逆らえずに張り型を引き抜いた。
「あぁあっ」
乱暴なやりように、宗介が声をあげ、きつくシーツを掴む。
「入れて、入れて…っ」
柔らかく解けたそこをひくつかせて、譫言のように呟く宗介に、私は指を二本纏めて突き入れた。
「あぁっ、あ…っ、ちが…っ」
喜んだのはほんの一瞬。
そのあまりの物足りなさに、宗介が失望の声を漏らして、しきりに腰を蠢かす。
指を出し入れしながら、たっぷりと張った双玉を手のひらに包み込むようにして揉んでやると、宗介が獣のように唸った。
「も、ダメ…っ」
白い内ももがひきつるように震え、先端から溢れ出す先走りがその量を増す。
「まだだ」
私は一言釘を差すと、指を引き抜き代わりに自身を宛った。
「あぁあああ…っ」
そのまま一気に腰を沈めると、宗介が嬌声をあげて、背を反らす。
身体の間に弾けた熱い迸りに、宗介が達したのが分かった。
「はぁっ、あ…、ごめん、なさい」
激しく胸を上下させながら、腕で顔を覆った宗介が、切れ切れの謝罪を述べる。
私は、わざとそれには答えずに、宗介の身体を乱暴に責めた。
「ごめんなさい、ごめんなさい」
激しい突き上げに、息を乱し、快楽に翻弄されながらも、宗介が必死に言い募る。
その頬が、涙に濡れているのを見て、私は苦笑すると、身体を倒して、頬を舐めた。
火照った頬は熱く、ほのかに塩味がする。
「分かった、もう分かったから」
腕を外させ、私は赤く潤んだ宗介の目を覗き込んだ。
「お、怒ってない？」
濡れた睫毛を重たげに瞬かせ、宗介が不安そうに私を窺う。
「怒ってないよ」
私は笑って見せると、宗介の口づけにちゅっと口付けた。
「良かった」
しがみついてくる宗介を、ぐいと抱き起こし、繋がったまま体位を変える。
「あぁああっ」
宗介は悲鳴のような声をあげると、きつく私の腰に足を絡めた。
「ほら、宗介も動いて」
促しながら、下から何度も揺すり上げる。
「はぁっ、あっ、あ…っ」
宗介は、私の肩に捕まると、息を詰めて腰を揺らした。
削げた腹から、胸元にかけて散った宗介の白濁を手に取り、汗ばんだ肌に這わせる。
にちゃにちゃと粘着質な音を立てながら、ぽちりと勃ちあがった胸の尖りを捏ねくり回し、押し潰しては、摘み上げて、爪を立てる。
「んふっ、ん、ん…っ」
宗介は、堪えるように唇を噛むと、私の肩口に額を付け、熱い吐息を漏らした。
内股がぴくぴくと引きつるように震え、収縮した内壁が、痛いほど私のものを締め付ける。
宗介の限界が近いのを知って、私は今までわざと触れなかった宗介のモノに手を伸ばした。
残滓にまみれたそこは、再び天を仰ぎ、新たな先走りを溢れさせて、今にも暴発しそうだ。
「やっ、やめてっ」
私の指先が触れた途端、宗介は私の手を引き剥がすようにして、押しとどめた。
「も、イきそうだから、だから」
「うん。我慢して」
私は、笑顔で言ってのけると、宗介の手を振り解いて、宗介のモノを掴んだ。
「くぅっ」
宗介も、自身に手を伸ばし、根元を握って戒める。
私は、宗介の身体を揺さぶるようにしながら、指先でまあるく先端を撫でた。
ぬるつく先走りに、指先を滑らせながら、執拗に撫で回しては、窪みにきつく爪を立てる。
宗介は、片手で根元を押さえながら、もう片方の手を口元に持っていき、手首に歯を立てていた。
宗介は、関節に歯を立てるのが好きだ。
手首や肘、膝や指先、足先など、関節を噛んでやると、身悶えして喜ぶ。
「んぅっ、ん、んあっ」
くぐもった声をあげながら、ひっきりなしに身体をくねらせ、身を焦がす射精感と、目も眩むような快感に、溺れきっている。
「宗介」
名前を呼ぶと、とろっとした目が、じっと私を見つめた。
だらしなく開いたままの唇の端から、溢れ出した唾液が、顎から首筋まで濡らしている。
「宗介」
もう一度呼ぶと、宗介は実に幸せそうに微笑んで、私の身体に腕を回した。
「大好き」
囁くように言い、私の身体をぎゅっと抱きしめる。
「ほんとに、豊さんが、大好き」
何度も聞かされたその言葉は、何度聞いても耳に心地いい。
私は喉で笑って、宗介の身体を抱きしめ返すと、ぶるるっ、と宗介の身体が震えた。
「も、だ、め…っ」
「良いよ」
一言いって、一気に宗介を押し倒す。
足を抱え上げ、上から突き入れるようにして一気に追い上げる。
宗介は、声もなくのけぞると、全身を突っ張らせて白濁を放った。
びゅくびゅくと溢れ出す迸りに合わせて、内壁がきゅうきゅう締まる。
それに逆らうようにして引き抜き、最奥まで突き上げると、私は宗介の中に射精した。
弛緩した宗介の身体が、私のもので中を濡らされて、ひくんと震える。
しばらく離れる気になれなくて、私は身体を繋げたまま、宗介の身体を抱いていた。
こうしていると、よく三週間も離れていられたものだ、としみじみ思ってしまう。
これからしばらくは、毎晩でも抱いてしまいそうだ。
そう宗介に言ってやると、けだるげに目を瞑っていた宗介は、ぱちりと目を開けて、「嬉しい！」と私の首にしがみついた。
結局、あの後もう一度して、さすがに疲れ果てた私達は、快楽の余韻に火照った体を寄り添わせて、取り留めのないピロートークを交わしていた。
「豊さん」
「ん？」
「光彦くん、元気だった？」
「あぁ。あの年頃の子どもというのは、ほんの数ヶ月であんなに成長するものなんだな。驚いたよ」
私の言葉に、宗介は目を細めて笑うと、私に擦り寄って目を閉じた。
「いつか、会いたいな」
眠たげに呟く宗介の肩に、毛布を引き寄せて掛けてやる。
「そうだな。いつか…」
寝息を立て始めた宗介の背中を撫でながら、私はぼんやりと『いつか』の事を考えていた。
そんな時が、来るのだろうか。
愛する息子と愛しい恋人、そして私。
三人で、会える日が来るのだろうか。
それは決して、不可能な未来ではない。
それなのに、ちっともそれが想像できないのは何故だろう。
私は、この時もう知っていたのかもしれない。
その時が来ることは、決してないことを。
おしまい