「暑いねえ」
「ホントに」
クーラーを付けていないナオさんの部屋はすごく蒸し暑い。
うちわを持ったまま、床に転がってうだっていると、ナオさんが少し心配そうに僕の顔を覗き込んだ。
「クーラー付けようか?」
「ううん、大丈夫」
首を振りながら起きあがり、トランクス一枚のナオさんの膝の上に乗っかる。
「すごく暑いけど、夏って感じがしてイイ」
ナオさんに抱きつきながら言うと、ナオさんは笑って僕の頬に口づけた。
網戸の向こうはせみの大合唱。
ベランダの鉢植えには、僕の育てているあさがおが、しわしわに萎んだ花をぶら下げている。
風に乗って蚊取り線香の匂いが鼻先を掠め、机の上には山盛りの宿題。
低く唸りながら首を振る扇風機も、時々涼しげに鳴る風鈴も、全部が夏を主張してる。
大好きな夏休み。
ナオさんとずっと一緒に居られて、いっぱい遊べる夏。
「今度はどこに遊びに行こうか」
「うーん…海、か山」
「んじゃどっちもね」
顔を見合わせ笑いながら、べたつく身体でぎゅうぎゅう抱き合う。
体温の高いナオさんの身体はすごく熱くて、ずっと抱き合っているとくらくらする。
「…あついね」
僕は、ナオさんの胸に身体を預けて、はぁ…とため息をついた。
ナオさんの手が、くしゃくしゃに乱れた僕の髪を丁寧に撫でつけ、ついでとばかりにいくつも口づけが落とされる。
「ナオさん」
髪なんかより、もっと別の所にキスが欲しくて、僕はナオさんの名前を呼ぶと、顔をあげて目を閉じた。
「ん…」
唇に触れる、濡れた感触。
そっと唇を開くと、ぬるりとナオさんの舌が滑り込んできた。
くすぐるようにあちこちを這い回ったかと思うと、いきなりきつく絡みついてくる。
夢中で舌を絡め返すと、ぴちゃりと濡れた音が響いた。
ナオさんの手が、Tシャツの裾から偲び込み、汗ばんだ肌をゆっくりと這う。
僕は身体を震わせて、ナオさんの首に腕を回した。
「ふ…ぅ、ん…っ」
キスの合間に漏れる声が、甘い色を帯びる。
息苦しくなるほどの長い間、僕たちはえんえんキスをしていた。
「はぁっはぁっ…」
ようやく離れた唇に、ナオさんに抱きついたまま、荒い呼吸を漏らす。
「…あつい」
身体が、溶けそうに熱い。
ナオさんの手が触れる端から、とろけていきそうだ。
「じゃ、脱いじゃえ」
ナオさんは笑って言いながら、すぽんと僕のTシャツを脱がした。
「何にもしてなくても暑いんだから、いっそのこともっとアツくなる?」
囁きと共に、キスだけでゆるく勃ちあがった前を探られる。
こんな状態でそんなことをされては、僕はうんと言うしかなくて。
頷いた僕を、ナオさんは笑って押し倒した。
これも夏の醍醐味の一つかも…ぼんやりと思う。
「あぁあ」
指と舌で十分に解された後ろに、ナオさんのモノがゆっくりと入ってきて、僕は掠れた声をあげた。
身体を濡らす汗は、僕達の身体を必要以上に密着させたかと思うと、ナオさんの背中に回した手がつるりと滑ったりもする。
湿度の高い部屋の中は空気が重くて、妙な閉塞感がある。
そんな中で、濡れた身体を絡ませあっていると、なんだかトリップ状態…自分達が何をしているのか、今ドコにいるのか分からなくなる…にもなったりして、それが結構楽しい。
「あっ、あぁ、ん、ん…っ」
激しいナオさんの突き上げに、僕は喘ぎながら、身体を捩った。
僕の身体を二つ折りにして、ナオさんがのし掛かるようにしながら、僕を追いつめていく。
ぽたり、ぽたりとナオさんの汗が落ち、僕の身体を伝う。
「ナ、オさんっ」
仰け反りながら、叫ぶようにナオさんを呼ぶ。
汗で滑る手が落ちないように、ぎりりとナオさんの背に爪を立てると、ナオさんは低く呻いて、腰を震わせた。
僕の前が弾けるのと、ナオさんの熱が僕の中に迸るのはほぼ同時。
僕達は、まるで全力疾走した後みたいに、肩で息をしながら、きつくお互いを抱きしめた。
「もっかいする体力は…残ってる?」
僕の顔を覗き込む、悪戯っぽい目。
「…若いからね」
余裕ぶってと答えると、ナオさんは低く笑って繋がったままぐるりと身体を反転させた。
未だ硬度を保ったままのモノが、内壁をぐるりと抉り、思わずうめき声が漏れる。
下から軽く突き上げられて、僕はゆっくりと身体を起こすと、ナオさんの上に跨った。
この体勢は恥ずかしい。けれど、自分で動いて快感を生み出せる…僕もナオさんもキモチイイ…からキライじゃない。
僕はナオさんの引き締まったお腹に手をつくと、ゆっくりと腰を持ち上げた。
ずるずると抜け出していく灼熱の塊。
自分の良い所に当たるように腰を揺らめかすと、たまらない快感にたまらず甘い喘ぎが漏れた。
「あ…ぁ、んっ」
ナオさんの手が、白濁にまみれた下腹部を撫で、再び勃ちあがって早くも蜜をこぼし始めている僕自身をくちゅくちゅと弄る。
僕は、身体をくねらせて、息を乱すと、びくびくと腰を震わせた。
いろんなモノで濡れたナオさんの手が、身体を這い回り、小さく自己主張する胸の尖りを摘み上げる。
僕はもう、身体に力が入らなくて、ナオさんを深々と飲み込んだまま、ナオさんの手が与えるめくるめくような快感に、ひたすら声をあげていた。
「うぁ、あ、あ、ぁあ」
ナオさんが、僕の腰を掴むなり、下から激しく突き上げてくる。
がくがくと揺さぶられながら、ナオさんの手に手を重ね、自分からも腰を動かす。
「あぁっ」
再び、生ぬるい白濁を散らしながら、僕は喉を反らし、天井を仰いだ。
「うっ」
唸るような声と共に、ナオさんも達する。
もう、身体中水をかぶったように濡れ、ともすると湯気が立ちそうだ。
僕らは同時に満足のため息をもらすと、仕上げに熱い口づけを交わした。
「キモチ良かったね」
「うん。いっぱい汗かいて、なんだかスッキリした」
二人で水風呂に浸かりながら、顔を見合わせて笑う。
たっぷり汗をかいて、身体の中に淀む熱も余すところなく吐き出して、なんだか身体が軽くなったような気までする。
「お風呂から出たら、昼寝しようか」
言われた途端に、あくびが出る。
暑いなかわざわざ汗をかくような事をして、ぐったり疲れた身体を、さっぱりとお風呂で流してから、のんびり昼寝をする。
やっぱり、夏はコレだよな。
つられたようにあくびをしているナオさんに、けだるい身体をもたせ掛ける。
楽しい夏は、まだ始まったばかりだった。
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