「へえ。結構良いトコ住んでんだな」
鍵の開く音で目が覚める。 希は決して眠りが浅い方では無いし、ベッドルームと玄関はかなり離れている。 なのに、目が覚めるなんて・・・ やっぱり愛?などと希が考えている内に、どかどかと部屋を歩く音がして、ベッドルームのドアが勢いよく開けられた。 とっさに希は寝たふりをする。 「・・・・・・・・・・・」 沈黙、そして大きなため息。 「の〜〜ぞ〜〜む〜〜」 大声と共に、シーツが思い切りひっぺがされる。 「幹、おはよ」 希はにっこりと笑って、数日ぶりに見る恋人に向かって手を振った。 「おはよ、じゃない!お前また浮気したな!!」 「浮気じゃないよ。ただの遊び」 ぷんぷんに怒っている恋人を宥めようと、希がのそのそと起き上がる。 「遊び、じゃないだろうが!見ず知らずの男と寝たりして、ヤバイ奴だったらどうすんだ!」 あ、コイツ本気で怒ってる・・・ 土産物らしいビニール袋を手にぶら下げたまま、自分に指を突きつけて怒る恋人に、希はすっかり満足すると、思い切り首に抱きついた。 「ごめん。もうしないから〜」 「うわっ!そんなベタベタの身体で抱きつくな!スーツが!!」 幹が慌てて、ぎゃあぎゃあ喚く。 希は、ますます力を込めて抱きつきながら、幹の耳に囁いた。 「お帰り。ダーリン」 「なんだよ。一緒に入んないの?」 ベッドから風呂場へ抱きかかえられて移動した希は、Tシャツとトランクス姿で風呂場へと入ってきた幹を見て、不満げに口を尖らせた。 「お前と入ると疲れるもん。ほら、シャワー出すぞ」 希を椅子に座らせて、幹がシャワーのコックを捻る。 暖かなお湯が頭の上から降ってきて、希は思わず目を閉じた。 「シャンプーするぞ?」 お湯が止まり、軽やかなフローラルの香りが鼻を掠める。 わしゃわしゃと乱暴な手つきで髪を洗われながら、希は目を瞑ったままで手を伸ばした。 横に立って髪を洗ってくれている幹の足に触ってみる。 「何?」 さわさわとふくらはぎを撫でていると、くすぐったそうに幹が足を動かした。 「足、固いね」 「鍛えてるもん」 笑いながら、幹はわざと足に力を込めてみせる。 かちかちの筋肉に覆われた足は、希が指先に力を込めてもびくともしない。 でも。 「幹は、膝裏弱いよね」 指先で膝の裏を擽ってやると、幹はぴくんと身体を震わせた。 「こら。いたずらするな!」 焦ったように、希の手から逃げながら、幹はシャワーに手を伸ばす。 頭からお湯をかけられて、希はやっと手を引っ込めた。 「ほら、手出して」 希の前にしゃがみ込んで、幹がスポンジを泡立てる。 希が素直に手を出すと、幹は指先から丁寧にスポンジを滑らせた。 「お前って、身体洗うの巧いよね」 強すぎず、弱すぎず、絶妙の力加減で身体を擦られるのは、ものすごく気持ちがいい。 「そりゃ、愛がこもってるし?」 子どものような顔で笑いながら、幹は熱心に希の身体を擦りあげた。 「そういや、ちゃんとゴム使っただろうな?」 急に真面目な顔をして、幹が希の顔を睨む。 「勿論。中出しなんてお前にしかさせないって」 けろりと言う希に、幹は泡だらけの手ででこぴんをした。 「いばって言うな」 そして、大きなため息をつく。 「たった1週間の出張なのに、どうして大人しくしててくんないの?」 うらめしげに言いながら、上目遣いで希の顔を見ると、希は小さく首を傾げて、だって・・・と口を開いた。 「だって、一週間もほっとかれたら捨てられたのかと思うし。一人で居るのやなんだもん。それに、一週間も我慢できない」 希の浮気(希が言うところの遊び)は、今に始まった事ではなく、出張の多い幹が家を空ける度に、必ずといって良いほど起こる事で・・・。 幹はもう一度ため息をつくと、シャワーで泡を流しながら希の顔をのぞき込んだ。 「もう、何遍もゆってるけど、俺はお前を捨てないし、絶対ココに帰ってくる。だからさあ、そんな寂しがんないで、大人しく待っててよ。毎晩必ず電話するし、メールも送るから。ね?」 言い聞かせるように、希のうす茶色の目をじっと見つめる。 が、希は一瞬目を合わせただけで、ふいっと顔を背けてしまった。 「言葉なんて信じない。絶対なんてありえないもん」 強い口調で言われた言葉に、幹は小さく苦笑する。 この台詞は言われ慣れている。 幹は、そっと希の濡れた髪を撫でると、胸の中へ抱き寄せた。 希も、大人しく身体を預ける。 胸の中に閉じこめるように、ぎゅっと力を込めて抱くと、希の細い腕が、幹の背中に回された。 「じゃあ、身体なら信じてくれる?」 言葉よりも行動、心より体の方を、希が欲しがるのはいつものことで。 幹は、小さく囁きながら、そっと唇に口付けた。 薄く開かれた希の唇に、強引に舌を割り込ませる。 「ん・・・」 希は、甘く喉を鳴らしながら、進入してきた幹の舌を受け入れた。 唾液があふれ出してくるのも構わずに、何度も舌を絡め合う。 柔らかくとろけたような舌を、きつく吸い上げると、希は身体を震わせた。 ふっくらとした下唇を甘く噛んで、ゆっくりと唇を離す。 「ね・・・、しよ?」 幹の首からぶら下がりながら、希は甘い声で誘い、幹は笑って希の額に口付けた。 「痕はつけられてないな・・・」 ベッドに横たえた希の身体を、すみずみまでチェックしながら幹が呟く。 「お前は俺のモノだって、ちゃんと印つけとかないとな」 「印なんか、つけてもつけなくても一緒だって」 「うるさい」 幹は、笑いながら首筋にそっと吸い付いた。 柔らかな首筋の皮膚を、舌先で味わい、ちろりと舐めてからきつく吸い上げる。 音を立てて唇を離すと、真っ赤な鬱血の痕が残った。 「痛いってば!」 不平を漏らす希を無視して、幹は胸や腹にいくつも痕を散らしていく。 「ん・・・ま、こんくらいかな」 下腹部に一際目立つ痕を残すと、幹は満足げに顔をあげて、額に掛かる髪をかき上げた。 「も、焦らしてないで、さっさと挿れろよ!」 頬を僅かに上気させて、希が自ら足を広げる。 「ムード無いなあ・・・」 幹は、小さくため息をつくと、来ていたTシャツを脱ぎ捨てた。 トランクスも下ろして、ベッドの下へと蹴り落とす。 「わ。やっぱ幹のでかい・・・」 晒された幹の下半身に、希は嬉しげに目を細めると身体を起こして手を伸ばした。 「お前と違って、ちゃんと一週間禁欲したからな」 幹のイヤミを聞き流しながら、太く逞しい幹のモノを手に握る。 軽く上下に手を動かすすと、手の中でそれは一層硬度と容積を増した。 「んじゃ、早く挿れたい?」 幹のモノから手を離さずに、希が幹の顔を見上げる。 「ああ。すっげえ挿れたい」 幹は、熱っぽい声で云いながら、希の肩を指先で撫でた。 「んじゃ、ちょっとお預け」 くすりと笑って、希が幹の先端に音をたてて口付ける。 「さっきまで、お前が挿れろっつってたのに」 お預けってなんだよ・・・と、ブツブツ言う幹を、上目遣いで見上げながら、希はゆっくりと幹のモノを飲み込んでいった。 空いた手で、張り詰めた双玉をこりこりと揉みつつ、舌先で先端を舐め回す。 「は・・・の、ぞむ・・・」 幹は、荒い息をつきながら、希が自分を愛撫する様を見つめて、小さく腰を揺らめかせた。 時折ちらりと、幹の顔を見上げながら、希は熱心に愛撫を続ける。 とろりと溢れ出てきた液体を啜り、銜え込めない部分を手で扱き上げると、幹は息を詰めて、希の頭を抱きかかえた。 手を離し、顔を上下させながら、希が逞しい幹の腰に腕を回す。 幹は、柔らかな髪に指を埋めて希の頭を押さえつけると、その喉奥に熱い白濁を溢れさせた。 「んうっ・・・」 喉を鳴らして白濁を飲み下しながら、唇からゆっくりと幹のモノを引き出していく。 希は、濡れた唇を舐めると、幹のモノを丁寧に舐め清めた。 「一度くらいじゃ、びくともしないね」 依然、硬度を保ったままのモノに愛しげに口付ける希に、幹は嬉しげな笑みを浮かべると、手のひらで頬を包み込んだ。 「今度こそ、中に入れてよ」 甘えを含んだ声で囁き、抱きしめる。 「しょうがない。入れさせてやる」 するりと幹の腕から抜け出すと、希はベッドに横たわり、片足を抱え上げて後ろを晒した。 希の痴態に、ごくりと喉を鳴らしながら、幹が希にのし掛かる。 「じゃ、遠慮なく・・・」 幹は、ぺろりと唇を舐めると、晒された後ろに張り詰めたモノを押し当てた。 「は、ぁああぁああ」 ぐいぐいと押し入ってくる熱に、希が大きく喉を反らす。 幹は、白い喉に噛み付くように口づけながら、ずんっと最奥まで突き上げた。 「あ・・はぁ・・あっ、もと、きっ!」 力強く激しい突き上げに、希が幹に縋り付く。 幹は身体を揺らしながら、ゆっくりと指先で自分の付けた痕を辿った。 下腹部に、一際赤く残る痕を手のひらで撫でさする。 「そ、こっ、幹、が入ってる・・・」 希は、幹の手に手を重ねると、熱い吐息と共に呟いた。 「希・・・すきだよ。ホントに、好きだ。信じてくれる?」 ぎゅっと希を抱きしめながら、幹がキスを繰り返す。 「ん・・・オレも、オレも好き。好き・・・もとき・・っ」 深く激しい腰使いに揺れながら、希は熱に浮かされたように何度も好き、を繰り返した。 「希・・・可愛い・・・」 目を細め、突き上げにあわせてとろとろと蜜を零す希のモノを、幹がきつく扱きあげる。 「ん、あ・・・はぁあぁん!」 希は、甘い声を漏らして腰を揺らし、きつく幹の背中に爪を立てた。 「も・・・ダメ。イきそう」 大きな両手で、華奢な希の細腰を掴み、幹が腰を叩き付ける。 「あ・・・ゃ・・も、あっ、あぁ、幹、もときっ!」 声を限りに喘ぎながら、希は身体を捩るようにして、白濁を迸らせた。 びくびくと震える内壁が、きつく幹のモノを締め付ける。 「きっつ・・・、ん・・・のぞむっ」 幹は、仰け反るようにして希の中に、二度目の精を流し込んだ。 ひくひくと、希の下腹部が波を打つ。 幹は、大きく息をつくと、きつく希を抱きしめて、頬に何度も口付けた。 「好きだよ。愛してる」 熱っぽい声で囁いて、頬に頬を擦り寄せる。 「・・・オレも」 希は目を細めると、乱れた幹の髪をくしゃくしゃと撫でた。 「も、浮気しない?」 僅かに身体を起こして、幹が希の目を見つめる。 「お前がオレを置いていかなきゃしないってば」 希は、幹の頬をそっと両手で包み込んだ。 「出張とかはしょうがないだろ」 「ダメ」 きっぱりと言って、希が小さく首を振る。 「お前という奴は・・・、まだ足らないか?」 脅すように言いながら、幹はまだ中に収めたままのモノを揺らした。 「足りないよ。全然足りない」 希が、ぎゅっと幹に抱きつく。 「全く・・・。お前の相手してると早く老けそう」 幹は、小さくぼやきながら、それでも幸せそうに笑うと、希をきつく抱き返した。 |