「ただいまぁ」
鍵の掛かっていないドアを開けて、云いながら玄関へ入る。
「まこちゃん!おかえり〜!」
僕の声を聞きつけて、ナオさんが玄関まで出てきて僕の手から
スーパーの袋を受け取ってくれた。
「今日の夕飯はなあに?」
スーパーの袋を覗きながら聞く声は、子供みたいだ。
「マーボー豆腐とバンバンジー。あと、ご飯とおみそ汁」
今日は、お豆腐ときゅうりの特売があったのだ。
「マーボー豆腐は挽肉多めにね」
ナオさんのリクエストに、僕は笑顔で頷いた。

制服の上からエプロンを付ける。
自宅のタンスの奥から、箱に入ったまま使われていない
新品のエプロンを見つけてきたのだ。
誰かからの貰い物らしいそのエプロンは、うすピンクの可愛らしい
花柄で、フリルやらレースやらが付いたのだった。
僕の母はシンプルで機能的なのが好きだから、貰ったものの
使いもしないでしまい込んであったんだろう。
僕だってこんなぴらぴらしたエプロンはやだったけど、この際
贅沢は言ってられない。
ナオさんは、女もののエプロンを付けている僕をみて、大爆笑した
あげくに、
「若奥さんみたいやねえ」
なんてとんちんかんな事をゆっていた。

だけど、実際若奥さんみたいなものなのかも・・・・
おみそ汁を作りながら、思う。
毎日のように、なおさんの部屋に来て、散らかりまくった部屋の
掃除して、溜まった洗濯物を片づけて、お夕飯を作って。
ここまで考えて、僕は溜息を吐いた。
若奥さんじゃなくて、お手伝いさんだ。これじゃあ。
たまに、自分でもなんでこんな事をしてるんだろう?って思うことも
たしかにある。
でも、一日でもココに来ないと落ち着かないのだ。
また、部屋を散らかして大事なものをなくして大騒ぎしてないかな?
着る服が無いからって、着替えもせずにいるんじゃないかな?
コンビニ弁当や、カップラーメンばかり食べてるんじゃないかな?
心配は尽きないのだ。

僕がこんな事を考えながら、夕飯のしたくをしていると、不意に
耳に息が掛かった。
振り返ると、ついさっきまでリビングでのんきに折り紙をしていた筈
のナオさんがすぐ後ろに立っている。
「まだちょっと時間がかかるから、待っててくれる?」
僕が云うと、ナオさんが後ろから抱き付いてきた。
「もう、待てない・・・」
低い声と共に、耳元で囁かれてぞくりとした快感が走る。
「あとちょっとだから、ね?」
僅かに後ろを向いて、言い聞かせようとしたが抱きすくめられて
うまくいかない。
「これじゃあ作れないよ?」
僕は手に持ったままだった包丁を置いて、後ろから回されたナオさん
の手に触れた。
「作らなくて良いから、食わせて・・・?」
ナオさんが腰を僕に押しつける。
腰に押しつけられた、固くて熱いモノ。
僕は身体を強張らせた。

「あっ・・・」
あっと言う間に下を脱がされて、きゅっと自身を握り込まれる。
僕はシンクの端を握り締めて、感覚に耐えた。
ナオさんはやるといったらやる人なので、今更抵抗してもムダだって
事は、経験済みだ。
耳たぶを甘く噛みながら、ナオさんの手は巧みに僕を追い上げる。
「は・・・・ぁ・・・・」
噛み締めた唇から、吐息が漏れた。
俯いたせいで露わになった僕の首筋に唇が這う。
張りつめた先端から溢れ出た蜜が、ナオさんの手を濡らしていた。
「立ってやんの初めてだけど、どお?」
濡れた音を立てて僕を扱きながら、ナオさんが耳に囁いた。
その熱い吐息だけで、達しそうになる。
僕は唇を噛み締めて、漏れそうになる声を抑えるので精一杯だった。
僕の先走りで濡れたナオさんの指が、後ろに滑る。
指先が何度か入り口を滑り、そして中に沈められた。

「く・・・・ぅ・・・」
ゆっくりと出入りする指の感触に、何も考えられなくなる。
完全に勃ちあがった僕のモノが、エプロンに擦れる。
それすらも耐えきれない快感となって僕を襲った。
いつのまにか、二本に増やされて内部を掻き回していた指が、
ふと止まる。
急に止められた動きに、僕は瞑っていた目を開いた。
俯いた僕の目の前に、伸ばされたナオさんの手。
そして、ナオさんの手はまな板の上のあるものを掴んで
僕の視界から消えた。
(まさか・・・・・)
イヤな予感に、冷や汗が背中を伝う。
「初めてついでに、コレも食っとく?」
ナオさんののんきな言葉と共に、指が引き抜かれ、
代わりに冷たいモノが後ろに押しあてられた。

「やっ、やだ・・・っ!!」
さすがに身体を捩って抵抗するが、ナオさんは聞く耳を持たなかった。
暴れる僕の腰を押さえつけて、ゆっくりと手の中のモノを僕の中へ
挿れていく。
濡れて冷たいきゅうりが僕の中に半ば埋まっていた。
「う・・・・ぅ・・」
冷たく固い感触に震えて、僕が嗚咽を漏らすとナオさんは優しく僕
の髪を撫でてくれた。
が、下の手も止まってはくれない。
自分の中を出入りするきゅうりの感触に、僕は快感とも悪寒とも
付かない感覚を抱いていた。
わざわざスーパーで長くて、太くて、トゲトゲがいっぱいで、瑞々しく
光るきゅうりを選んで来た自分が情けなくなる。

「も、やめ・・・、お・・・願いっ」
俯いた僕の目は、エプロンににじんだ染みが映っていた。
他ならぬ僕が作った染みは、だんだん大きさを広げている。
きゅうりと僕がたてる、ぐちゃぐちゃ云う音と、目の前に広がる染みに
耐えきれずに、僕が涙声で懇願すると、やっとナオさんは手を止めた。
「やっぱりきゅうりじゃイヤか?」
訳の分からない事を云いながら、ナオさんが乱暴にきゅうりを引き抜く。
引き抜かれる感触に、両手を突っ張って耐えていた直後、今度は
熱くたぎったモノが後ろに押しあてられた。
「・・・・・・・・・・・あっ」
これでもうお終いかと思っていた、僕は甘かった。
僕をさんざんきゅうりでいたぶって楽しんでいたせいか、いつもよりも
容積を増したナオさんのモノが一気に中に突き入れられる。
突き上げられた衝撃で、張りつめていた僕のモノが一気にはじけた。
エプロンのカーテンに遮られ、僕の前はなんともいえない不快な状態に
なっている。
達した後の余韻に浸る暇もなく、ナオさんは激しく僕を突き上げ、僕は
もう声を耐えることもできずに、ただ揺さぶられるだけだった。

「んっ・・・・ぅ・・・んあっ・・・あっ・・・ぅん」
あられもない声をあげている僕の耳に、大好きな声が響く。
「きゅうりと、僕のと、どっちがイイ?」
からかうような口調で云いながら、ナオさんはぎりぎりまで引き抜いた
自身を一気に中に突き入れた。
「あぁ・・・・・・・っ!」
思わず仰け反って高い声をあげる僕の首筋に、ナオさんの唇が
寄せられる。
「どっちだ・・・・?」
しつこく聞きながら、ナオさんはきつく僕の首筋を吸い上げる。
僕はいいようにされたのがくやしくて、小さな声で云った。
「きゅうり」
途端に、ナオさんの動きが止まった。

「ふうん。僕のよか、きゅうりが良いんだ・・・」
嬉しそうにすら聞こえる声が、後ろから聞こえる。
「んじゃ、コレは要らないよね?」
ナオさんは意地悪く云いながら、根本まで入り込んでいた自身を
ゆっくりと引きずり出した。
完全に火の付いた身体は、ナオさんをもっと欲しがっていた。
無意識の内に抜け出ようとするナオさんを内部に押しとどめようと、
きつく内壁が収縮する。
きつい締め上げに、ナオさんが吐息を漏らした。
「オイ。上の口と下の口が別行動してるぞ?」
からかうようにいいつつ、なおも強引に引き抜こうとする。
「まこはコッチのが良いんやろ?」
ナオさんは僕の中から引き抜いたあと、まだそのまま手に持っていた
らしいきゅうりで、緩く立ち上がりかけた僕のモノを下から撫で上げた。
入り口近くまで引き抜かれたナオさんのモノと、僕のモノをしつこく嬲る
きゅうりに僕はとうとう根負けして、小さい声で懇願した。
「・・・・・抜かない、で・・」
「ん?」
こういう時のナオさんはものすごくいじわるで、わざと聞こえないフリを
したりする。
僕は泣きたい気持ちになりながら、もう一度同じ言葉を繰り返した。
僕の声が泣き声に近くなっているのを聞いて、ナオさんもさすがに
気が咎めたのか、優しく後ろから抱きしめると、抜きかけていたモノを
再び中に突き入れた。
「ん、あっ・・・・!」
抱きしめられたまま突き入れられて、爪先から脳天まで快感が走る。
僕は半ば意識を飛ばして、ナオさんに身体を擦りつけていた。
「も、ダメ・・・・・・っ」
一際深く奥を抉られて、そのまま2度目の白濁を放つ。
きつく引き絞る内部に、ナオさんも流石に耐えきれなくなったのか、
低く喉を鳴らして、僕の中に迸りをたたきつけた。

「も・・・やだ・・・・」
荒い息の間に、恨み言を漏らす。
まな板の上に転がっている、いやらしく濡れたきゅうり。
僕の放ったモノを2回も受け止めて、ドロドロのぐちょぐちょのエプロン。
足を伝うナオさんの放ったモノ。
鳴きすぎて掠れる喉。
痛む腰。
最悪な気分だった。
が、最悪な気分にさせた、当の本人のナオさんは至ってご機嫌で、
僕をぎゅうぎゅう抱きしめると、髪にいくつもキスを落とした。
「まこちゃん最高」
幸せそうな声でこう云われただけで、最悪気分が吹っ飛んでいく。
「あとは僕が作ってやるな?」
ナオさんは云いながら、僕を抱え上げるとバスルームまで連れていく。
「ナオさん、料理できるの?」
バスルームでドロドロのエプロンやらズボンやらを脱がせて貰いながら
僕が聞くと、
「料理?うん。できるよ」
ナオさんは自信たっぷりに頷いた。
「お前が風呂から出る頃には、おいしい夕飯出来てる筈だから」
笑顔で僕をバスルームに押し込み、ナオさんは台所へ戻っていった。

ナオさんの料理を食べられるなんて初めてだ。
僕が楽しみに思いながら身体を洗っていると、ナオさんの喚く声と共に
派手な音が台所から響いてきた。
僕は慌てて泡を落とし、タオルを身体に巻き付けただけの格好で
台所に駆けつける。
ほんの数分の間に、台所は惨状と化していた。
「イヤ〜、料理ってやっぱり難しいねえ」
惨状の真ん中で、フライパンを手ににっこり笑顔のナオさんには
頭からマーボー豆腐が掛かっていた。

結局、ナオさんと一緒にお風呂に入って(この間さらに疲れる事が
あったけど、それはもう思い出したくない)
お風呂上がりに僕が作った夕飯は、ごはん。おみそ汁。マーボー豆腐
代わりに急遽メニューに入れた卵焼き。
そして、必死に洗って皮を綺麗に剥いたきゅうりを使ったバンバンジー
というメニューに収まった。
「あ〜ん」
なんていって、ナオさんにバンバンジーを口に入れて貰う僕の心境が
複雑極まりなかったことは、云うまでもない。

*おちまい*

 

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