dark novelette

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□人研修

目を覚ますと、いつもどおりの時間だった。午前四時三十分。外はまだ暗い。
 僕は、ベッドから下りると、軽く伸びをした。
 ぴりぴりとした緊張感が身体に漲り、キリキリと胃が痛む。
 僕は、取り敢えず洗面所へ行き、顔を洗った。
鏡に映る、強張った青白い顔の自分を見つめ返す。
「頑張れ」
 自分で自分を励まして、僕は取り敢えず憂鬱な事から片づけることにした。
 強制的に排泄して、身体の中を空っぽにするという行為は、何度やっても苦しくて、終わるころにはぐったりしてしまう。
 僕は、脂汗にまみれた身体をシャワーで流すと、おぼつかない足取りで、寝室へと戻った。
 クローゼットの扉を開け、小道具の入った箱を出す。
 コンドーム。潤滑剤。バイブを数種類。
 ベッドの上に並べていると、緊張のあまり気持ちが悪くなってきた。
 けれど、準備をしておかなければ、きっとすごく痛い目に遭う。
 僕は、部長のモノを思い出して、ぶるりと背筋を震わせた。
 ベッドの上に上がり、足を開いて指先に潤滑剤を取る。半透明のクリームは、指の上でぷるぷると揺れた。
 息を詰め、最奥にクリームを塗りつける。なかなか指を入れる勇気がでなくて、しばらく周囲をぬるぬると辿っていたけど、意を決して指先を潜り込ませた。
 つるりと意外な程あっさりと指先が飲み込まれ、力を込めるとぬるぬると沈んでいく。
 思い切って指を出し入れしてみると、もどかしいような感覚が下腹部にわだかまった。
 指先にクリームをべたべたと塗りつけてから、恐る恐る二本の指を潜り込ませる。
「うぅ…」
 きつい圧迫感を伴ってはいたが、僕の後ろは二本の指をぎゅうぎゅうと締め付けながら受け入れていて。
 僕は浅く息を吐きながら、微かに指を蠢かせた。
「はぁっ、あ…」
 指先が感じる場所を掠めて、思わず喘ぎ声をあげてしまう。
 思い切って、その場所を狙って突くと、たまらない快感と共に、前が頭をもたげてきた。
「う…。くっ」
 自分の手がもたらす快感がなんだか怖くなって、ずるずると指を引き抜く。
 僕は、ごくりと唾を飲み込むと、濡れた指で、一番細身のバイブを掴んだ。
 ぶるぶると震える手で、なんとか後ろへと押し当てる。指とはまるで違う、冷たい感触に怯むけれど、半ばやけ気味に力を込める。
 入り口にぴりりと痛みが走り、身体の中に入ってきた無機物を拒むように、内壁が収縮する。僅かに動かすだけで激痛が走り、それ以上進めることも、引き抜くこともできなくなって、僕は途方に暮れてしまった。
 困り果てながら、必死ではっきりしない記憶を辿る。
 僕にバイブを挿入しながら、大滝さんは前を弄ってくれたっけ。そういえば、先生も僕が苦痛の声を上げる度、前を愛撫してくれた。
「…ん」
 僅かに勃った前を掴み、ぎこちない手つきで擦ると、身体が緩むのが分かる。
 僕は、前を刺激しながら、そろそろとバイブを沈めていった。イきそうになる度に手を止め、長い時間を掛けて、バイブを奥まで飲み込むことに成功する。
「はぁっはぁ…ぅっく」
 身体中を汗に濡らし、僕は肩で息をしながら、バイブの大きさが身体に馴染むのを待った。
 一番細身のこれでさえ、こんなにツライというのに、あんなのが入るのだろうか…。
 ベッドの端に転がった太さの違うバイブを見遣って、僕は小さく首を振った。
 手に力を込め、ゆっくりとバイブを引きずり出す。内壁を擦りながら出ていくバイブに、僕はくっと息を詰めた。
 半ばまで引き出し、再び埋める。僅かに伴う痛みを、前を弄ることでごまかしながら、無心に出し入れを繰り返した。
 だんだん、痛みよりも快楽の度合いが増してくる。僕は、身体の中のモノを引き抜くと、一回り大きなバイブに手を伸ばした。
 前のモノと同じように、ゴムを被せ、ローションを塗りつける。
 他事を考えまいという意識が働いたせいか、僕は、いつしかこの作業に没頭していた。
 ぐったりと疲れ果てた身体にムチ打ち、記憶にある部長のモノよりも、やや小さめのバイブを苦労して後ろにねじ込む。
 時計を見ると、既に八時を過ぎていて、僕に残された時間はもうあまりなかった。
 九時までには終わらせて、準備をしないと…。僕は、少し焦りながら、僕には太すぎるように思えるバイブと格闘した。

「おはよう」
「お、おはようございます」
 十時ぴったりにやってきた部長は、一人ではなかった。部長に続いて部屋に入ってきた二人の男を戸惑いながら見つめる。
「こちらは専務。そしてこちらは取引先の社長さんだ。挨拶しなさい」
 部長に促されるまま、「紺野です」と頭を下げる。
 二人にじろじろと眺め回されて、僕は思わず身を縮めた。
「服を脱いで、こっちへ来なさい」
 部長だけならともかく、見ず知らずに人(といっても、一人は会社の上司にあたるのだろうけど)の前で、裸になるのは、かなりの抵抗があったが、やらないわけにはいかない。
 僕は不安な気持ちを一層強くしながらも、もそもそと服を脱ぎ、呼ばれるがままにソファに座る三人の足許へと跪いた。
「まぁまぁ可愛い子じゃないか」
 専務の手が伸び、僕の顎を上げさせる。
「といっても、私の好みではないが」
「専務は気の強い子の方がお好きですからねぇ」
「反抗的で生意気なのを屈服させて痛め付けるのが楽しいんだよ」
 専務は笑いながら僕から手を離した。
「コレ、いくつでしたっけ?」
 コレ、というのは僕の事だ。
「十八だ。若いだろう」
 部長はどこか自慢げに言うと、僕を見下ろして口を開いた。
「おい。お二人のをしゃぶって差し上げろ」
 言われた言葉に、怯みながら、どちらからすれば良いのだろう…と二人の顔を交互に窺う。
「じゃ、俺からして貰おうかな」
 そう言って僕の前にモノを突きだしたのは、取引先の社長だという人だった。
 歳の頃は、三十代後半だろうか。三人の中では一番若い。
 僕は、震える息をつくと、思い切って口を開き、鼻先に突きつけられたモノをくわえ込んだ。
「お。なかなかイイぞ」
 頭に置かれた手に力がこもり、僕はえづきそうになるのを堪えながら、それを奥まで飲み込んだ。
 半ば必死で舌を蠢かしていると、乱暴に頭が揺すられ、柔らかな喉奥を先端が抉る。
「う…っ、イくぞ。飲め」
 口中で膨れあがったモノが弾け、どろりとした白濁が溢れかえる。
 こみ上げる吐き気と共に、白濁を飲み下し、僕は肩で息を吐いた。
「どうでした?若社長」
「悪くない。まだまだヘタだが、それがまた初々しくてね」
 ぼんやりしていると、いきなり髪を掴まれた。「ぼーっとしてないで、早く専務にもして差し上げろ」
 苛立ったような部長の声に、済みません、と呟きながら、今度は専務のモノをくわえる。
 僕が、専務のモノをしゃぶっていると、不意に後ろに指先が触れた。
「コイツはまだバージンでしてね」
「お、そうなのか?」
「今日、犯してやるから準備しておくように言いつけてあるんですわ」
「そりゃ楽しみだ」
 頭の上で交わされる会話を、どこか他人事のように聞きながら、僕はひたすら専務のモノを口と手を使って愛撫したが、専務のモノはなかなか限界が訪れない。
「相変わらず遅漏で?」
「歳のせいかね。勃ちも悪いよ。まぁ、長く楽しめて良いんだが」
 軽く腰を突き上げながら言う専務に、僕は動かなくなってきた舌を、なんとか動かした。
 ようやく、専務のモノが口中に放たれた頃には、顎はだるく、舌も痺れてしまっていて、僕はもうこれだけで疲れ果てていた。
「次は私だ」
 息を吐く間もなく、今度は部長のモノが濡れた唇に擦りつけられる。
「舌を出して舐めて。よく濡らすんだ。自分の為にね」
 言われた言葉に、僕はとうとうコレが自分の中に挿れられるのかと覚悟を固めた。
 べろりと舌全体を使って舐め上げ、その表面を濡らしていく。
 どんどん勢いを増すソレに怯えながら、僕はせめてそれほどの苦痛がないようにと祈るばかりだった。
「もういい。手をついて、尻をこっちに向けろ」
 突き飛ばされるようにして、床に転がる。
 僕は、のろのろと身体を起こすと、フローリングの床に手をつき、部長に尻を差し出した。
 ぺちぺちと尻を叩かれ、背筋を恐怖が走る。
「ちゃんとココは使えるようにしておいたな?」 念を押すように言われて、僕は小さく頷いた。
 後ろに濡れた先端が触れる。
 ま、まさかいきなりソレを…?
「うぁあっ」
 途端に襲った激痛に、僕は思わず大声をあげていた。
 めりめりと身体が内から引き裂かれるような痛みに、一瞬機が遠くなる。
 事前に慣らしておいたとはいえ、まだ経験の浅いそこが、いきなり男の質量を受け入れるのには無理があった。
「キツいな」
 低く唸るように言いながら、部長が強引に腰を進める。
 新たな痛みに意識を引き戻され、僕は再び声を上げた。
 身体中燃えるように熱いのに、その表面は冷たい汗で覆われる。
 開きっぱなしの口から、飲み込みきれない唾液が溢れて、顎を伝っていった。
 もうこれ以上は無理だ。
 そう思った場所の更に奥まで、部長のモノがめり込んでいく。
「やれやれ。挿れるのだけで一苦労だ。まぁ、裂けなかっただけ上等としようか」
 根元まで僕の中に沈め、部長が息を吐きながら言った。
 あまりの痛みに身動きすら取れないでいる僕を後目に、部長がゆっくりとソレを引きずり出す。
 まだ身体に馴染んでいない内に動かされて、僕は悲鳴すら上げられずに頭を振り、床に爪を立てた。
 ぞろりと身体から出ていくモノに、内臓まで引きずり出される気がする。
「ぐぅっ」
 再びずん、と突き上げられて、僕は潰れたうめき声をあげた。
「うぁ、あ、ぁあっ」
 容赦なく繰り返される抜き差しに、意味のない声が唇から零れ、頭が真っ白になる。
「どうですか?」
「いささかキツ過ぎるが…。ま、バージンですからね。こんなモンでしょう。お二人に替わる頃には、丁度良い具合になってるかもしれませんな」 いいながら、部長は僕を滅茶苦茶に突き上げる。
 身体の上で交わされた会話は、僕の耳には届かなかった。
 耳の奥で、どくどくと脈打つ自分の鼓動が響き、時折キーンと耳鳴りがする。
 突き上げられる度に、角度を変えて抉られて、絶え間なく襲う苦痛に、僕は掠れた悲鳴を上げ続けた。
「っく…イくぞ!」
 声と共に、がくがくと揺さぶられ、部長のモノが僕の中で膨れあがる。
 身体の中に叩きつけられる迸り。
 僕は身体を震わせて、それを受け止めた。
 部長が離れるなり、床にどさりとくずおれる。快感は、微塵も感じられず、永遠にも思えるほど長い苦痛の時間だった。
「どうだ?初めて犯された感想は」
 髪を掴み、部長が僕の汗と涙で濡れた顔を覗き込む。
 僕は、唇を震わせるだけで何も言えなかった。
「お前はもう私の物だ。従順に大人しくさえしてれば、優しくしてやる」
 言葉と共に、ぐしゃぐしゃと髪を撫でられる。
「せいぜい、私と会社の為に役に立つことだな」
 投げかけられた言葉に、僕はがくりと項垂れた。
「そうそう。部長の言う通り。君は部長のモノであると同時に、会社のモノでもある」
 専務の手が、僕の腕を強い力で掴む。
「何しろ新入社員なんだから。社員は会社とその上司に、最大限の奉仕をせんとな」
 身体を返され、大きく足が割り拡げられたかと思うと、その間に専務の大きな体が割り込む。
「やっ…ぁあ」
 無意識の抵抗は、部長の手に封じ込められた。
 逃げを打つ身体を押さえ込まれ、抗う腕が部長のネクタイによって縛られる。
 部長の精液で濡れる後ろに、専務のモノが突き入れられる。
 続けざまの行為に、慣れない身体がついていける訳もなく、僕は仰け反りながら、掠れた悲鳴をあげた。
 その口に、若社長のモノがねじ込まれる。
 上と下を同時に犯されながら、僕は苦しさと痛みに涙を流していた。
「まだ、自分が楽しむところまではいかないか」
 部長の手が、萎えた僕のモノを弄る。
 途端にびくびくと震える身体に、専務が荒い息をついた。
「お、イイぞ。部長、今のをもう一度」
 専務の声に、部長の手が僕のモノをやわやわと揉みしだく。
 身体の奥に渦巻く快感に、僕はくぐもった声をあげた。
「コッチも良いですよ。喉の奥が震えて」
 ぐい、と僕の喉奥を犯しながら若社長が言う。
「しょうがない。今日だけは前でイかせてやるか」
 部長は、しぶしぶと言った口調で、ゆるく勃ちあがった僕のモノを、きつく扱き始めた。
 挿入の痛みを凌駕する程の快感に、縛られた指先が、ぎゅっと握りしめられる。
「はぁっはぁっ、そろそろ…っ」
「俺も…」 
 喉奥に生温かなモノが溢れ、身体の中に精液が流し込まれる。
 それと同時に、僕も白濁を吐き出していた。

「じゃ、次は交替で…」
「その前に場所変えますか。寝室へ行きましょう。いろいろ道具も有るし」
「そうですな」
 会話を交わしながら、三人の身体が僕から離れる。
「もたもたするな。行くぞ」
 ぐったりと床に倒れたままの僕の頭を、部長の足が軽く蹴る。
 僕は、力を振り絞って、のろのろと身体を起こした。身体の奥から流し込まれたモノが溢れ出し、太股を伝う。
 僕は、前を歩く三人の後ろを、手を縛られたまま、床を這うようにして付いていった。
 研修は、まだ始まったばかりだ。 
                              ◆おわり◆
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