「まこちゃん!」
どこからか聞こえた耳慣れた声に、僕は振り向いて人混みの中を見回した。
ゴールデンウイークの真っ最中。
僕は友達と街に遊びに出てきていた。
滅多に見ない映画を見て、ご飯を食べたあと、ぶらぶらと買い物をしていたところで、僕は、視線の先にナオさんを見つけて本当にびっくりした。
「ナオさん!」
「奇遇やねえ」
人混みをかきわけてやってきたナオさんが、僕の目の前までやってきて笑う。
「まこちゃんは後ろ姿でも、すぐ分かった」
ナオさんの笑顔に、僕は抱きつきたくてうずうずしたけど、友達の手前ぐっと我慢して、ナオさんの顔を見上げた。
「何してたの?」
「本屋に注文してた本を取りに来た」
そういうナオさんは、本屋の包みを手にしている。
「まこちゃんは?」
「友達と遊びに」
「そう」
ナオさんが目を細める。
「帰ったら、遊びに行っても良い?」
これ以上話していたら、離れがたくなってしまいそうで、僕は慌てて口を開いた。
「勿論」
ナオさんが笑って、さらりと僕の髪を撫でる。
「いっぱい遊んでおいで」
結局、夕方まで友達と遊び倒してから、僕はナオさんの家に遊びに行った。
「ナオさん!」
「いらっしゃい」
迎えに出てくれたナオさんに思い切り抱きつく。
遊んでいる間中、ナオさんの事が頭から離れなかった。
「楽しかった?」
僕を抱き返しながら、ナオさんが優しく聞く。
「楽しかった…けど」
僕は背伸びしてナオさんの耳に囁いた。
「ナオさんにすごく会いたかった」
「まこちゃんは後ろ姿も可愛いねぇ」
言葉と共に、音を立てて背中に口づけが落とされる。
ナオさんの可愛いは慣れているけど、やっぱり恥ずかしくて、僕は赤くなった顔をシーツに埋めた。
背骨のでこぼこをひとつひとつ確かめるように、ナオさんの唇が下りていく。
ナオさんは、僕のお尻に頬を寄せると、そこに軽く噛み付いて小さく笑った。
「ココも可愛いけど…」
噛み付いた場所に今度は軽く口付けて、ナオさんが腕を伸ばす。
「ココが一番可愛い」
うなじを撫でる指先がくすぐったい。
「この、後頭部から首筋にかけてのラインがほんとに可愛い」
ナオさんは力説するけれど、自分じゃそんな場所見たことがない。
「僕は、ナオさんの首筋から肩にかけてのラインが好き。鎖骨のところとか」
言いながら、お気に入りのそのラインを手のひらで撫でる。
太い首筋から続く、固い肩。
歯を立てたって、びくともしない。
頑丈そうな鎖骨を指先で撫でると、ナオさんは嬉しげに笑って僕の髪を撫で返した。
「は…」
息苦しくなって、僕は顔を埋めていたシーツから顔をあげた。
頬がやけに熱くて、自分が赤くなっていることを知る。
今更…とは思うけれども、やっぱりこれにはいつまで経っても慣れる事がない。
「ん…」
後ろの方から聞こえる水音。
僕は再び顔を伏せると、沸き上がる快感に小さく腰を揺すった。
ぬめるナオさんの舌が、時折中まで入り込み、その度に後ろがひくつくのが分かる。
息を吹きかけられて、思わずきゅっと力を込めると、低い笑い声と共に、お尻に吐息が掛かった。
「挿れてい?」
言葉と共に、熱く濡れた先端が、解れた後ろへと押し当てられる。
僕が返事をするまでもなく、僕の後ろはナオさんに応えるように先端に吸い付き、誘うようにざわめく。
ナオさんは、大きな両手で高くあげられた僕の腰をしっかりと掴むと、ゆっくりと中に入ってきた。
焦れったいほどの動きに、ねだるように腰が揺れる。
ナオさんは、時折揺すり上げながら、全てを僕に収めると、小さく息をついて、腰だけを高くあげてシーツに這う僕に、覆い被さった。
「は…」
肌に触れる汗ばんだ熱いナオさんの身体に、思わず吐息が漏れる。
「まこちゃん」
甘い声で名前を呼ばれて、くらくらする。
ナオさんは、腰を揺らしながら、柔らかく僕の耳を噛んだ。
首筋に軽く歯を立てられて、小さく背が反る。
ナオさんは、鼻先を擦りつけるようにして僕の後頭部から首筋へといくつも口づけを落とすと、後ろからぎゅっと僕を抱きしめた。
腰の突き上げが、だんだんスピードを増す。
前に回った手に、くりくりと尖りを摘まれて、僕は小さく嬌声を漏らした。
一度出てしまった声は、なかなか止まらなくて、ナオさんの突き上げに合わせるようにして、声をあげてしまう。
「あっ、あっ、あっ、ん、んあっ」
ナオさんの指先が、喉を撫でる。
「まこ」
再び耳元で聞こえた声に、僕は苦しい姿勢のまま、無理矢理ナオさんを見上げた。
寄せられた唇に、自分から噛み付くようにして口付ける。
口づけながら、すっかり張り詰めて、先走りを零しているモノを扱かれて、酸欠と快感に頭が真っ白になる。
「はあっは…あっ、あ、あぁっ」
息苦しさに唇を離し、荒い息をつきながら、ナオさんの動きに合わせて腰を揺らす。
前を扱かれながら、一際奥を抉られて、僕は思いきり背を反らしながら、身体を震わせて白濁を放った。
放ちきり、ぐたりと弛緩する僕の身体を、ナオさんが抱き起こすように持ち上げる。
ナオさんはしっかりと胸の中に僕を抱きしめると、僕の中に熱い迸りを叩き付けた。
身体の中で震えるナオさんにつられるように、僕の身体もぴくりと震える。
髪に優しく落とされた口づけに、僕はうっとりと目を閉じた。
「残りの連休の予定は?」
気だるい身体をナオさんに擦り寄せて顔を見上げる。
「まこちゃんとデート」
僕の顔を覗き込んで笑うナオさんに、僕はぎゅっと抱きついた。 |