「摂〜」
さっきまで俺のベッドに寝そべって、漫画を読んでいた筈の頼が、
いつの間にか俺のすぐ側まで来ていた。
「ん?なに?」
テレビから目を逸らさずに、曖昧に返事を返す。
ゲームは今まさに佳境だった。
手こずったラストダンジョンも半ばまで来て、このまま順調にいけば
今日中にクリアできそうだ。
俺は真剣そのもので、コントローラーを握っていた。
「摂!」
大きな声で呼ばれて、しぶしぶ画面から目を離す。
「何だよ」
「しよう」
目が寄りそうになるほど俺に顔を近づけた頼が、甘い声で囁いた。

「俺が朝しようっつったら、ヤダっつったじゃん!」
朝ご飯のあと、ベッドに押し倒そうとしたら、邪険に手を振り払われた。
「俺、まんが読みたいから」
あっさりとこう言われて、まんがを読み始めた頼を横目でみながら、
疼く下半身をなだめつつ、仕方なくゲームを始めたのに、ゲームが
乗ってきた途端にコレだ。
「もう、読み終わったもん。だから、しよう?」
頼は身体をすり寄せて、ぎゅうぎゅうと俺にもたれ掛かる。
俺は頼に潰されそうになりながら、必死でコントローラーを握った。
「続きがオヤジの書斎にあるから、それ持ってきて読んでろよ」
頼の身体を押し戻す。
「俺は今したいんだってば!」
頼が全体重を掛けて、俺にのしかかってきた。
「あ、あと30分待てって!」
もうすぐボス戦で、それが終わればセーブポイントがある筈。
そう思って頼んだのに、頼は笑って抱きついてきた。
「待てない」
そう囁く声は熱く甘く、俺の耳に忍び込む。
いつもなら、この時点で頼を押し倒すトコだけど・・・。
俺はコントローラーから手を離さなかった。

「俺とヤるより、ゲームがしたいのか?」
相変わらずゲームに集中している俺に、頼が凄んだ声で言う。
オイ、さっきの甘い声はいったいどこへ行った?
そのあまりの変貌ぶりに、俺は小さく笑みを漏らした。
「俺だってお前とヤりたいけど、こいつら達を死なせるのが
イヤなんだって」
いったん画面から目を離して、頼の顔を見つめて言う。
口を尖らせていた頼は(こういう時の頼の顔はものすごく
子どもっぽい)、
俺の言葉を聞いて、きょとんとした。
「こいつらって、こいつら?」
画面の中で健気に走るゲームキャラを指さして、俺の顔を
呆れたように見る。
俺は笑って頷いた。
何事にも感情移入しがちな俺は、たとえゲームの中であっても、
人が死ぬのはたまらなくイヤで・・・ゲームオーバーにならないよ
うに、いつも細心の注意を払う。
「そう。だから、あと少しだけ待っててくれる?」
頼の顔をのぞき込んでお願いすると、頼はむっつりと黙り込んだ。
沈黙を了解と受け取って、俺は急いでゲームを進める。
俺だって、頼とヤりたくて仕方が無い。
でも、あとちょっと・・・。
こいつらを安全な場所に行かせるまで・・・。
半ば必死で、やっかいなダンジョンを攻略していると、
俺の隣に座り込んでいた頼が、画面を見つめてぽつりと言った。
「摂はこんな奴らにまで、優しいんだな」
「え?」
呟きに思わず頼の顔を見る。
頼は俺の顔を睨むように見返すと、急に怒ったように言った。
「お前がその気なら、いいよ。俺も勝手にするから」
言いながら、胡座をかいた俺の股間に手を伸ばす。
「ちょっ、な、何する・・・」
訳が分からずにうろたえる俺の言葉を無視して、頼はスウェットの
ウエストから、中へと手を滑り込ませた。
「お前はゲームやってろ。絶対やめんなよ?」
脅すようにいいながら、頼の手が俺のモノを掴みあげる。
俺はびっくりして頼の顔を見たが、頼は俺の視線を無視して、
ゆっくりと俺の股間に顔を埋めた。

「よ・・・り・・?」
引きずり出された自身の先を、濡れた舌で舐められる。
俺はどうしたらいいのか分からずに、画面と頼の後頭部を交互に
見つめて、掠れた声で頼を呼んだ。
「黙ってゲームに集中しろって」
頼が僅かに顔をあげて上目遣いで俺を睨む。
紅い唇が唾液に濡れて、いやらしく光っている。
思わずごくりと唾を飲むと、頼は俺に見せつけるように、舌を出して
唇を舐め、そして再び俺の股間に顔を埋めた。
生暖かな口腔に飲み込まれて、背筋を快感が駆け上る。
俺は震える手でコントローラーを握りしめた。
画面では今まさに、ボス戦が始まろうとしている。
緊迫感漂う音楽が流れ出し、俺の股間で立てられている濡れた音と
混じる。
俺は額に汗が滲むのを感じながら、必死でゲームへと集中した。

「んぅっ・・・・」
丁寧に根本から先端までを舐めあげられる。
俺の感じるところを知り尽くした手と舌と唇が、確実に俺を追いつめて
行く。
張り詰めた双玉をこりこりと手の中で転がされながら、先走りの露の
漏れる先端をきつく吸い上げられて、俺は思わず声を漏らすと、
身体を前に傾がせた。
手に、力が入らない。
さっきから、何度も操作をミスってしまって、ゲームオーバー寸前だ。
「よ・・り・・・、も・・・っ」
自分でも情けなくなるくらい、震えて余裕の無い声で、俺は頼に限界を
訴えた。
それなのに頼は顔をあげてくれなかった。
「まだ、ゲームは終わってないだろ?」
俺の股間をしゃぶったまま、低い声で笑う。
微かな吐息が濡れそぼった自身を掠めて、俺の腰がびくびく震える。
「ゲームオーバーしたら、イかせてやらないからな?」
口の周りをべたべたに濡らした頼が、俺の顔を見上げて笑う。
いたずらっ子のようにあどけないその笑みは、同時にものすごい色気を
放っていて・・・
俺は思わずコントローラーを投げ捨てると、頼をその場に押し倒していた。

「頼・・・」
床に頼を押し倒して、肩で息をつきながら情欲に掠れた声で頼を呼ぶ。
が、俺の下の頼は、実に醒めた目で俺を見上げた。
「何?ゲームの途中だろ?」
あっさりとこう言いながら、脇に転がったコントローラーを拾って
俺に押しつけて来たりする。
俺は黙ってコントローラーごと、頼の手を床に縫い止めた。
「何すんだよ・・・っん・・」
不機嫌な口を唇で塞ぐ。
嫌がって逃げる舌を強引に追い絡めながら、俺は頼の服の下に手を滑り
込ませた。
滑らかで、そして熱い頼の身体。
どんなに醒めた目をしていても、頼だって俺と同じくらい焦れてるって
すぐに分かる。
手のひらを胸へと這わせて、肌の感触を楽しむようにゆっくり撫でると、
頼はすぐに甘い吐息を鼻から漏らした。
口を離せば憎まれ口を叩かれるのは分かっていたから、舌を絡めたまま
ゆっくりと胸の尖りを指先で摘む。
素直な身体は俺の指に、すぐに反応を返してくる。
あっという間にぷくりと立ち上がって来たそこを、俺は丁寧に押しつぶした。

舌で触れたいのを我慢して、立ち上がった胸から脇腹へと手を滑らせる。
脇腹を擽るように撫でてやると、くぐもった声を立てて身体を捩った頼に、
足を蹴られた。
頼はかなりのくすぐったがりで、特に首筋と脇が弱い。
くすぐったがる頼は可愛いから、俺はつい擽ってしまうんだけど・・・
頼はイヤらしくするたびに怒られる。
宥めるように髪を撫でると、差し込んだ舌を強く吸われた。
「ん・・・」
甘い頼の声。
俺の首に回された白い腕。
無意識なのか、頼が小さく腰を揺らめかせるのに誘われて、俺は頼の
ウエストにと手を掛けた。
俺と揃いのスウェットを強引に、下着ごと脱がせてそこらに放る。
外気に晒された下肢が、微かに震えるのが分かる。
俺はキスを続けたまま、ゆっくり下へと手を伸ばした。
脇から下腹へと手を移動させて、へそから下を丁寧に撫でる。
もう既に立ち上がっているモノに手を触れると、ぬるりと手が滑った。

「ぅう・・・ん、んっ・・・」
長いキスに、頼が微かに苦しそうな声を上げる。
俺は僅かに唇を離した。
「は・・・っ、はぁ、・・・ん・・・」
頼が息をついて、そして至近距離で俺を睨む。
だけど、潤んだ瞳がきつい目元を頼りなく緩ませている上に、
目の縁が紅く染まっていて、ちっとも迫力が無い。
「睨む目も色っぽい」
俺が手を伸ばして目の縁を撫でると、頼は憮然と横を向いた。
横を向いた頬にそっと口づけて、露わになった首筋に顔を埋める。
頼の匂いを胸一杯に吸い込むと、頼の指が髪を掴んだ。
わしゃわしゃと髪を乱されながら、薄い皮膚を吸い上げる。
「・・あっ、痕つけんな・・・」
言われた時にはもう遅かった。
鎖骨の丁度上あたり、柔らかな場所にバッチリ付いた紅い痕。
「ごめん。もう付けちゃった・・・」
紅く付いた痕を指先で撫でると、肩口にきつく噛み付かれた。
鋭い痛みに顔を顰めると、頼が俺を見上げて笑う。
「お返し」
いたずらっぽく笑う顔が可愛くて、俺は頼を抱きしめた。

「う・・・・」
指と舌で十分に解した後ろに、熱くたぎったモノを押し当てる。
俺のモノが押し入るにつれて、頼の背中がきゅうっと反った。
「平気か?」
目をきつく閉じて、息を荒げる頼の顔をのぞき込む。
頼はうっすらと目を開いて俺を見つめると、俺の首にしがみついて、耳に
口元を寄せてきた。
「平気じゃいられないくらい、感じさせろよ」
低い声で囁いて、俺の耳をぺろりと舐める。
ホントに頼は、俺を煽ることにかけては超一級だ。
俺のモノは瞬く間に硬度を増し、頼の中で角度を変えた。
「んんっ・・!」
頼が呻いて喉を反らす。
俺はその喉に噛みつくように口づけながら、きつく腰を打ち付けた。
頼の中は熱く狭く、俺に絡みつくようにざわざわと蠢く。
今にも達しそうになるのをぐっと押さえて、俺は頼のポイントを狙って
突き上げた。
「んあっ!あ・・あ、あっ・・・!」
腰を突き上げる度に、頼の口から甘く掠れた声があがる。
「せ、つ・・・っ!」
名前を呼ばれて頼の顔を見下ろすと、快感に潤んだ目の端から、ぽろりと
涙がこぼれ落ちた。
「頼」
きつく抱きしめながら、舌先で涙を受け止める。
頼の腕が俺の首にからみつき、肩口に歯が立てられる。
「んっ・・・・・」
痛みに顔を顰めた途端、二人の間に飛沫が散った。
途端にきつく収縮した内部に、俺のモノも弾け飛ぶ。
「摂・・・」
荒い息のまま名前を呼ぶ口に、俺は荒々しく口づけた。

 

「身体、痛い・・・」
頼がうらめしそうな顔で俺を見る。
すぐ側にベッドがあるって云うのに、固いフローリングの上で、
ヤっちゃったからなあ。
「ごめん・・・」
俺は謝って、頼の額に口づけた。
とてもじゃないけど、今の一回だけじゃ満足できない。
次はベッドの上で・・・
そう思って頼の身体を抱き起こすと、頼は甘えたような声で
俺の耳に囁いた。
「喉、かわいた・・・」
「あ、んじゃ何か持ってくるよ。何がイイ?」
スウェットの下だけ履きながら、頼の顔をのぞき込む。
「レモンカルピス。薄目で。氷たくさん」
「ん」
俺は頷きながら部屋を出た。

おぼんにオヤツとカルピス(頼のは薄目、俺のは濃い目)をのっけて
部屋に戻ると、頼はすっかり服を着てベッドの上に寝そべっていた。
「さんきゅ」
俺の手から、グラスを受け取って頼がにっこり笑う。
あ〜、可愛い!
俺はぐびぐびとカルピスを飲む頼の身体を抱き寄せた。
「もっかいしよ?今度はベッドで・・・」
首筋に顔を埋めて小さく囁く。
頼はかたん、と音を立ててグラスをテーブルに置きながら、小さく云った。
「ヤダ」
「ええ〜?」
頼はけだるげに髪を掻き上げて、大きな欠伸をしている。
「おやすみ」
頼は小さく云うと俺の頬に軽く口づけて、幸せそうにまくらに頬を埋めた。
「俺が起きるまでにクリアできてたら、付き合ってやる」
眠そうな声と共に指さされた先を見ると、一時停止ボタンを押したまま
放り出していたゲームの画面が見える。
そもそも、あのゲームを中断させたのは頼だぞ?
「俺、今ヤりたいんだけど・・・」
一応、お伺いを立ててはみたけれど、頼は俺の言葉をあっさり無視して、
俺に背を向けると、ぬくぬくと布団に丸まった。

かくして俺は、またもや疼く下半身を押さえつつ、一人淋しくゲームに
励むことになった。
頼が目覚めるまでに、エンディングを迎えないとな・・・。
こう思っている自分に気づいて、思わず笑う。
完全に頼に振り回されてる。
けど、それは全然いやじゃなくて・・・。
寝入った頼の、微かな寝息を聞きながら、俺は幸せに頬を緩ませた。

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