「元気にしてたか?」
優しく髪を撫でられて、思わず涙がこぼれそうになる。
嬉しくて、嬉しがる自分が悔しくて・・・。
黙って俯いた片瀬の顎を、大きな手がすくいあげる。
「淋しかった?」
低い声と共に、手のひらが頬を撫でる。
頬に触れた冷たい感触に、片瀬は思わず三上の身体
を押しのけた。
胸がぎゅうっと締め付けられる。
今度こそ、本当に涙が出そうだった。
淋しかったに決まってるじゃないか。ひと月以上、電話一本
くれなくて、もう今度こそダメだって思った矢先に、
いきなり訪ねてくるなんて。
・・・・結婚指輪を填めた手で、触れるなんて。
こう思った途端に、涙が零れた。
冷たい指輪の感触が残ったままの頬を、熱い涙が伝っ
ていく。
「ユウ」
三上は小さく名前を呼んで、片瀬の身体を抱きしめた。
「連絡できなくて、ごめん。淋しかったよな・・・」
俯いたまま声をあげずに泣く片瀬の髪を、三上の手がゆっくり
と撫でた。
「ぅ・・・・」
片瀬の喉の奥で、小さく嗚咽が洩れる。
渉は何も分かっていない。
もう、こんな関係終わりにしよう。
この腕の中から出て、別れを告げよう。
・・・こう思うのに、動けない。
腕の中が、あまりにも暖かで。
髪を撫でる手が、あまりにも優しくて。
片瀬はぎゅっと目を瞑った。
「ユウ」
甘く囁かれるように名前を呼ばれる。
途端に、片瀬は三上の胸にしがみつくように抱きついていた。
懐かしい三上の匂いが、片瀬の頭を痺れさせる。
「わたる・・・」
胸に顔を埋めて、小さな声で名前を呼ぶ。
三上の腕が、ゆっくりと片瀬を床に押し倒した。
荒々しく口づけながら、あっと言う間に片瀬の服を剥いでいく。
「ん・・・ぅ・・ふっ・・・・」
一ヶ月ぶりのキス。
一ヶ月ぶりの人の体温。
気持ちよすぎて、何も考えられなくなっていく。
片瀬は、三上の首に腕を回して、自分から口を開けてキスを
ねだった。「ユウ」
名前を呼ばれて大人しく、ソファに凭れた三上の足の間に蹲る。
熱く張りつめた三上自身にゆっくりと舌を這わせ、口に含む。
髪を撫でる手が、嬉しかった。
双玉を手で揉みほぐしながら、根本から先端まで、丁寧に
舐め上げる。
髪を撫でる手に力が込められて、片瀬はそれに従うように
大きく口を開けて、喉奥深くまで三上を迎え入れた。
音を立てて、顔を上下させる。
かたん、という音に目線をあげると、三上の手がソファの下の
引き出しに伸びていた。
三上の手が、半透明の小さなボトルを引き出しから出す。
ぱちん!という蓋の開く音と共に、ほのかに漂う甘い香り。
後ろがひくり、と蠢くのが分かった。
ローションを纏わせた三上の手のひらが、片瀬の背中を撫でて
いく。
ぬるりとした感触に、片瀬は身体を竦ませた。
その拍子に喉奥で三上を締め付けてしまい、三上の腰が小さく
震える。
反応してくれたのが嬉しくて、片瀬は一層激しく三上のモノを
舐めしゃぶった。
三上の手は、ゆっくりと片瀬の双丘を撫でさすり、時折つるりと
奥まで指を滑らせる。
「ん・・・っ」
僅かに触れては、離れていく指が焦れったい。
無意識のうちに誘うように腰が揺れる。
頭上で三上が微かに笑った。
ほんの僅かに指先を含ませては出し、入り口が指を求めてざわ
めくのを楽しむ。
「は・・・ぁ・・」
そそり立ったモノに手を添えたまま、片瀬が縋るように三上を
見上げた。
唇が三上の先走りと唾液とで、いやらしく濡れて光っている。
三上は唇の端をまげて笑うと、一気に指を根本まで突っ込んだ。
「んあっ!」
片瀬が小さく顎を反らせて声をあげる。
強引な挿入に、久しぶりに受け入れた後ろが攣るように痛んだ。
「ほら」
息を乱す片瀬の頭を、三上の手のひらが押す。
片瀬は再び三上のモノを飲み込んだ。
後ろを出入りする指は、2本へと増やされて、容赦なく中を抉る。
「んは・・ぁ・・・」
後ろへの刺激で息が乱れて、口に含んでいるのがつらい。
片瀬は舌を出して、三上のモノへと舌を這わせた。
無心に自分のモノを舐める片瀬の頬を、三上が撫でる。
片瀬は腰をくねらせながら、三上の手のひらへ頬を擦り寄せた。
「もういい・・・あとは、後ろで・・」
三上の声に、片瀬が僅かに顔をあげる。
三上は片瀬の額に口づけると、片瀬を床に這わせて、腰だけを
高く抱え上げた。
かり・・・、と片瀬の指がフローリングの床を掻く。
片瀬は床に顔を伏せた。
「ん・・ぐ・・・っ」
腕を噛んで、声を堪える。
自分の唾液に濡れた三上が、ゆっくりと中に入ってきた。
苦しいほどの圧迫感と自分の中を熱く満たす充足感に、身体が
震える。
きつく腰を突き立てられて、がくがくと揺さぶられながら、片瀬は
腕を涙で濡らした。
膝と肘が、フローリングで擦れて痛い。
本当は、ベッドでしたかった。
せめて、顔を見て繋がりたかった。
でも、現実は床の上で、背中を向けての行為に、切なくて涙が
止まらない。
ベッドでしたい、顔をみていたい、と一言云えば、三上はそうして
くれる筈だ。
なのに、その一言さえ切り出せない自分の弱さが、苦しかった。
そして、三上が云わなければ、それに気づいてくれない事も。
声を殺して嗚咽する度に、ひくつく後ろが三上をきつく締め付けた。
「んあっ、あ・・・う・・・ぅうっ・・・」
ポイントをきつく突かれて、片瀬は思わず身体を仰け反らせて声を
あげていた。
堪えきれずに、そのまま嗚咽を洩らす。
「ユウ?」
ようやく泣き声にきづいた三上が、そっと片瀬の髪を撫でた。
「どうした?」
「ぅ・・・う・・ぅうっ・・・」
片瀬は腕に顔を埋めて、嗚咽を洩らしながら、小さく首を振った。
三上は身体を倒して片瀬の身体を抱きしめると、片瀬の中に自身
を埋めたまま、片瀬の身体を半回転させた。
「ひっ!ぅ・・・っく・・」
繋がったまま、中をぐるりと抉られる感触に、片瀬は息を詰めて
仰け反った。
「泣くな・・・」
涙に濡れた片瀬の顔を見下ろして、三上は大きな手で濡れた頬を
拭った。
「渉・・・」
片瀬は涙で潤んだ目を開けて、目の前の三上をじっと見つめた。
懐かしい、渉。
大好きな、人。
手を伸ばして、首にしがみつく。
三上は片瀬の足を抱え上げると、きつく腰を打ち付けた。
激しい突き上げに、頭の中が白く霞む。
置いていかないで。
一人にしないで。
ずっと、側に居て。
指輪なんて、外してよ・・・・。
決して言えない想いが、心の中に積もっていく。
「渉・・・・!」
三上の肩に爪を立て、片瀬は思いきり白濁を散らした。
しがみついた三上の首が、片瀬の涙で熱く濡れる。
「ユウ・・・っ!」
三上は一際奥を抉ると、片瀬の奥へと迸りを流し込んだ。
荒い息を吐いて、二人で抱き合う。
「キ・・ス・・して」
片瀬は荒い息を継ぎながら、濡れた唇を開いて三上にねだった。
これが、今の自分に言える、ただ一つの願いだった。
三上の唇が、優しく片瀬の唇を塞ぐ。
片瀬は震えながら、三上の唇を貪った。
胸の中に溢れ返る想いを押さえて、三上の身体にしがみつく。
押さえきれない涙だけが、あとからあとから頬を伝って落ちていった。
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