「はあ・・・」
家の前で待っている僕の前に、自転車をすっ飛ばしたナオさんが姿を見せた。 「ナオさん!」 ナオさんが自転車を止めるのももどかしく、思い切り抱きつく。 「お待たせ」 胸の中に、僕をぎゅっと抱きしめながら、ナオさんは笑って言った。 「どしたん?さみしくなっちゃった?」 優しい声に、ナオさんの胸に顔を埋めたまま小さく頷く。 僕は、ナオさんの背中に腕を回して、ゆっくりと息をついた。 ものすごく、安心する。 あったかいナオさんの腕の中。 「・・・ん?」 お腹の辺りが、妙に暖かいのに気が付いて、僕はナオさんの胸から顔をあげた。 「あ、そうだ。まこちゃんにおみやげ〜」 パーカーのカンガルーポケットから、ナオさんが銀色に光る物を取り出す。 「ホラ」 ナオさんは、銀色のホイルを剥くと、目の前でそれを二つに折って見せてくれた。 中から鮮やかな金色が湯気を立てる。 「わあ!」 美味しそうなやきいもに、僕は思わず歓声を上げた。 「まこちゃんち、あがるの初めて」 ナオさんを家の中に招き入れて、リビングへ通す。 今まで、家の前までは何度も送ってもらったけれど、そういえば上がって貰ったことは無かったっけ。 僕はお茶を入れると、物珍しげにきょろきょろしているナオさんの前に腰を下ろした。 「立派なお家やねえ」 「ナオさん家だって立派じゃない」 感心したように言うナオさんに、湯飲みを渡す。 うまそうに茶を啜るナオさんと一緒にやきいもを食べて、僕はすっかり満ち足りた気分になっていた。 やきいもを食べてから、まこちゃんの部屋がみたい、というナオさんを二階に上げた。 「まこちゃんの匂いがする」 部屋に入るなり、ナオさんはひくひくと鼻を動かしながら言う。 僕は、内心ぎくりとした。 匂い、残ってないよねえ? 窓開けて空気は入れ換えたし、ゴミはトイレに流したし。 緊張している僕を後目に、ナオさんはきょろきょろと僕の部屋を見回すと、嬉しげにベッドに腰掛けた。 「ココでいっつも寝てるんやね〜」 ナオさんが、ごろりとベッドに寝転がる。 ナオさんが寝ると、なんだかベッドが小さく見える。 僕は笑って、寝ころんだナオさんの隣に腰を下ろした。 「あ〜、お布団もまこちゃんの匂い」 布団に顔を埋めて、ナオさんがくぐもった声で云う。 僕は、手を伸ばして柔らかなナオさんの髪を撫でた。 「ね、まこちゃん」 勢いよく飛び起きて、ナオさんが僕を見上げる。 「なに?」 キラキラした子どもみたいな目で見つめられて、僕は笑いながらナオさんの顔を見返した。 「電話が掛かってきた時ね、ちょうどまこちゃんの事考えてたから、ちょっとびっくりした」 僕の髪を撫でながら、ナオさんが笑いを含んだ声で云う。 「僕も・・・ずっとナオさんの事考えてた」 髪を撫でる手の優しさに、僕は目を細めてナオさんの肩にもたれ掛かった。 ナオさんが、鼻先を髪に埋めるようにして、髪にいくつもキスを落とす。 「まこちゃん、何してるかなって、考えてた」 耳元で、ナオさんが言葉を句切って甘く囁く。 僕は、首を竦めながら鼓動が早くなるのを感じていた。 「ん?」 不意にナオさんが、動きを止める。 「どうしたの?」 ナオさんの顔を見上げると、ナオさんはにやりと笑って僕を見た。 「もしかして・・・一人で、した?」 何を? ・・・なんて聞かなくても、ナオさんのにやり顔が雄弁に物語っている。 な、何でバレたんだろ? 「ど、どうして?」 僕は、目を泳がせながらも平静を装った。 「何となく」 ナオさんが目だけで笑いながら、くんくんと僕のにおいをかぐ。 匂い・・・する訳ないよね。 だって、ちゃんと手洗ったし。 でも、ナオさん鼻がイイからなあ・・・・ 僕は顔を赤くして、こちらをじっと見つめているナオさんの視線から逃れようと、目を逸らした。 「やっぱりしたの?」 迫ってくるナオさんに、慌てて後ずさる。 「僕というこいびとが居ながら?」 言いながらどんどん迫ってくるナオさんに、僕は壁に追いつめられた。 「だ、だって・・・ナオさんの事考えてたら、我慢できなく・・・っ」 最後まで言わないうちに、上から覆い被さるようにナオさんが口付けてくる。 「ん・・・・・」 深い口づけに、僕は一瞬で陶然となった。 夢中で、舌を絡め返して、口中を這い回る舌を捕まえて吸い上げる。 静かな部屋の中に、濡れた音が響く。 口の端から、飲み込みきれない唾液が溢れて、顎から喉へと伝っていく。 ゆっくりと唇を吸い上げながらナオさんが唇を離し、僕はすっかり脱力してナオさんの腕の中に居た。 「僕だって、もう我慢できない」 低く囁いて、ナオさんがそっと僕を押し倒す。 「ん・・・」 僕は、ナオさんの首にしがみついた。 自分でするのとはまるで違う。 僕の手より、ナオさんの手の方がずっと大きくて、ずっと優しい。 緩急をつけて、僕のモノを扱きながら、ナオさんはにやにやと僕の顔をのぞき込んだ。 「自分でも、こうしたの?」 かあっと顔に血が上る。 僕は、ぷいっと顔を背けると、小さな声で呟いた。 「もう、しない」 「・・・え?」 ナオさんが驚いたように目を見開いて僕を見る。 「自分でするより、ナオさんにして貰った方がずっとイイ。・・・から、もう自分でしない」 随分恥ずかしい事を口走っている気がしたけれど、本心だから良いことにする。 「も〜〜、まこちゃんてば可愛すぎ!!」 ナオさんは僕の言葉を聞くなり、僕をぎゅうぎゅう抱きしめると、そこら中にキスを落とした。 「んじゃ、僕もしないどこっと。まこちゃん、相手してね」 とびきり甘く耳に囁かれて、思わず背筋がぞくりとする。 そのまま、耳たぶを柔らかく噛まれて、僕は小さく身震いした。 ナオさんの唇が、ゆっくりと首筋を降りていく間に、僕自身の先走りで濡れた指が、胸の尖りを摘み上げる。 指先で軽く転がされると、そこはあっという間に固く芯を持ち始めた。 「ん・・・」 勃ち上がった胸を、唇が愛撫し、舌が舐めあげる。 僕は、ナオさんの髪に指を絡めて、小さく身体を仰け反らせた。 指先が、下腹部の茂みをかきわけ、ゆるりと立ち上がったモノの形を辿る。 触れるか触れないかの位置で、繰り返される愛撫に焦れて、僕はもじもじと腰を振った。 胸を口に含んだまま、ナオさんが小さく笑う。 濡れた胸に吐息が掛かり、僕は身体を竦ませた。 指は更に奥へと滑り、指先が入り込む感覚に、息を詰める。 ゆっくりと中に潜り込み、慎重に中を探る指先に、何も考えられなくなる。 僕は、絶え間なく喘ぎながら、ナオさんの頭を抱きしめた。 「ん・・・・」 息をつき、身体の力を抜くと、熱いナオさんが力強く押し入ってくる。 「な、んか・・、ナオさん・・・」 ぎっちりと根本まで収められて、そのあまりの大きさに何度も浅く息を吐く。 ナオさんは、ゆっくりと腰を動かしながら、僕の頬に口付けた。 「まこちゃんの中、すごく熱い・・・」 掠れた声で言いながら、ナオさんが目を細める。 「ナオさん、ナオさんっ・・・」 ゆったりと突き上げられて、快感に目が眩む。 僕は腕を伸ばしてナオさんに縋り付いた。 ナオさんが、きつく胸や首筋に口づけを落とす。 「は・・・ぁっ、ん・・・んぁんっ!」 ぐいっと腰を回すように突き入れられて、僕はあられもない声をあげた。 次第に激しくなる突き上げに、自然に僕の腰も揺れる。 ナオさんの手が、ぬるぬるとぬめる僕のモノを掴み、同じスピードで扱きあげる。 「い・・あっあ、あ・・・」 僕は、ぎゅっと目を瞑って、首を振りながら快感に耐えた。 きつく瞑った目の端から、涙がこぼれ落ちていく。 「まこちゃん」 ナオさんは熱く囁くと、唇に深く口付けた。 絡まる舌と溢れる蜜。 上からも下からも響く濡れた音に、耳からも犯される。 「んあっ!!」 僕は、唇を離すと一際高い声をあげて、小さく身体を震わせた。 ナオさんの手が、どろりと僕の白濁で汚れる。 ナオさんは、濡れた手をぺろりと舐めると、僕の身体をきつく抱きしめて、激しく腰を打ち付けた。 身体の中に溢れかえる熱い液体に、思わずぎゅっとしがみつく。 「愛してる」 ナオさんは、僕を抱き返しながら、柔らかな声で囁いた。 「ナオさん」 けだるくほてったままの体を、ぴったりとナオさんに寄せて、僕はそっとナオさんを呼んだ。 「ん?」 優しい目が、僕の顔をじっと見つめる。 「わがまま言って、迷惑じゃ無かった?勉強、してたよね?」 僕は、ナオさんの目を見つめながら、小さな声で呟いた。 ナオさんの目が、糸のように細くなる。 「迷惑な訳ないやん」 ナオさんは、目を細めたまま、ゆっくりと僕の背中を撫でた。 「呼んでくれたのは嬉しかったし、まこちゃんにわがまま言われるの好きやし、勉強はしてなかったし」 おどけたように言いながら、ナオさんが僕の額に額を付ける。 「まこちゃんから電話があったとき、みんなでたき火して遊んでたんやよ。だから、全然平気!」 ちゅっと鼻先に口付けられて、僕は少し安心すると、ナオさんにぎゅっと抱きついた。 「ナオさん、大好き」 「僕も大好き」 顔を見合わせて、二人で笑う。 暖かなナオさんの腕の中で、僕はすごくしあわせだった。 |