「オーツくん。調子はどお?」
後ろから声を掛けられて、飛び上がる。
「チ、チーフ!いいです!すごく!」
びっくりしたのと嬉しいのとで、まともに喋れない。
「そお。良かった。その調子で頑張ってね〜」
まるで小さな子どもにするみたいに、俺の頭をナデナデして、チーフが厨房へと入っていく。
朝からチーフに会えるなんて、今日は良い日だ…
俺は感動に打ち震えながら、チーフの後ろ姿を見送った。
「うっしゃ。やるか!」
一気に上がったテンションに、俺は小さく気合いを入れると猛然と店内の掃除を始めた。


この就職難の中、なんとか入った外資系の(そこそこ)一流会社。
持ち前の要領のよさと世渡り上手を発揮して、同僚との仲は上々、上司にも気に入られて、順風満帆三ヶ月。
さあ、これからこの会社でバリバリやっていくぞ!とヤル気十分だったある日、運命の事件は起こった。
駅から家へと向かう道は、距離にしたら短いのに、時間だけはやたらかかる。
理由は長い長い急坂。
体力にはそれなりに自信のある俺だけど、登り終える頃には息があがってしまう。
ある日、その坂で自転車に乗っている人を見つけた。
jこの坂はかなり傾斜がきついから、自転車で登り切るのは至難の業で、俺も一度チャレンジしたけど途中でギブアップした。
その人は坂の半ばに居たけれど、だんだんきつくなってきたのか、かなりヨロヨロしていた。
おいおい大丈夫か…?
そう思った途端、目の前の自転車は大きな音と共に倒れ、びっくりした俺の前に、いろんなモノが転がってきた。
順序としては、モノを拾うより、倒れた人を助けるべきだったんだろうけれど、その時俺は気が動転していて、次々に転がってくるモノを拾い上げた。
じゃがいもじゃがいもりんごオレンジじゃがいもアボガド…夢中で拾い顔を上げると、自転車ごと倒れた人がようやく起きあがるところだった。
「大丈夫ですか?」
両手いっぱいにじゃがいもやらなんやらを抱えたまま駆け寄る。
「だい…じょうぶ、かな」
そのとき、顔をあげたその人とばっちり目が合い…そして俺は恋に落ちた。
可愛い……
思わずぽかんと口が開いてしまう。
目の前に居るのはあきらかに男だったけれど、それを差し引いてもあまりあるほど俺のタイプで…
俺はすっかり舞い上がりながら、自転車のかごにじゃがいもやなんかを放り込むと、その人を恭しく助け起こした。


もう大丈夫、という彼を言いくるめて、強引に送ることにする。
行き先を尋ねたら、坂を上りきった先にある、レストランだと言うので、俺は少しびっくりした。
そのレストランは、ちょっとレトロな洋館みたいな雰囲気で…もともとは民家だった所だと雑誌に載っていた…俺には、ちょっと手が出ないような高級レストランだ。
買い出しなんかしてるくらいだから、てっきりただの下働きか、バイトだろうと思ったのに、れっきとしたシェフをしているという。
「へえ。シェフなんですか?」
俺の驚いた声に、その人は僅かに頬を染めて頷いた。
「そうなんです」
こんな可憐な料理人が居て良いんだろうか?
俺は完全にポーっとしながら、かごのひしゃげた自転車を引いていた。
彼の名前は流山さん。
年は俺より7つも年上、29歳。
見た目は高校生にすら見えるから、俺はまたもやびっくりした。
詳しく聞くと、主任料理長という立派な肩書きまで付いているらしい。
「その店は、シェフが買い出しまでするんですか?」
「今日は休みなんですけど、次のメニューの試作品を作ろうと思って…」
「よくこの坂を、自転車であがる気になりましたねえ」
からかうように言う俺に、その人がのんきに笑う。
「いつも車でここ通ってるから、自転車でも通れる気がして」
ううん。よく分からないけど、ちょっとズレてる。
その天然な感じが、また可愛くて、俺はますます惚れてしまった。
「あの、良かったら、お礼に何か作りますから、ちょっと寄っていきませんか?」
「行きます!!!!」
望んだとおりの展開に、嬉しくて飛び上がりそうになりながら、何度も頷く。
そんな俺を見て、彼はにこにこと笑った。


「おまちどおさま」
出てきた料理に目を見張る。
ほんの15分程度しか待っていないのに、目の前に並べられる料理は、どれも綺麗で、手が込んでいるように見える。
「どれも、新作なんだ。ちょっと、食べてみて」
「頂きます」
俺は何故か震える手で、フォークを握ると、おそるおそる料理に手を付けた。

数分後。
俺は、流山さんの全てに惚れ込んでいて…。
その彼に、全てを捧げることに決めた。



それからは語るも涙な怒濤の日々。
会社を辞め、それが原因で親からは勘当され、家を追い出されて安アパートに一人暮らし。
なんとかレストランで雇って貰える事になったものの、料理人の世界は超体育会系で、俺はヒエラルキーにも入れない下っ端。
思い人は頂点に輝くチーフ。俺の前途は多難だった。
仕事と言えば、来る日も来る日も掃除と皿洗いだけの日々で、その間にひたすら下宿で、皮むきの練習をする。
ずっと自宅で、家事は母親まかせだった俺は、一人暮らしの家事と、慣れない肉体労働に音を上げつつも、いつか流山さん…チーフシェフ…の隣りで仕事がしたい一心で、日々をなんとかこなしていた。
厨房と洗い場は別になっているせいで、チーフの姿を拝むことすらままならない日もあったけれど、そんな日は、厨房から流れてくる匂いにひたすら鼻をひくつかせ、下げられた皿に残っている料理の切れ端やソースをちょっと味見して、流山さんに思いを馳せる…
「コラァ!ボーっとしてんじゃねえ!!」
「すっ、スミマセン!!!」
途端に背後から浴びせられる怒声に、俺は慌てて我に返ると、皿洗いに取りかかった。
ホントに、仕事も恋も、ラクじゃない…


「全くやってらんねえよ…」
深夜の事務所でパソコンに向かいながら、俺は一人ブチブチ文句を言っていた。
「俺を何だと思ってるんだ。コック見習いだぞ。事務仕事なんか、俺の仕事じゃねえっつの」
誰も居ないところでしか、こんな事は言えない。
現にこの仕事を頼まれた時も、笑顔で請け負うしかなかった。
悲しいことに、俺には料理よりも、デスクワークの方が断然向いている。
毎日さんざん料理の勉強をしてはいるけど、所詮は経験と才能がものをいう世界だ。
包丁よりはパソコンを、食材よりは書類を扱う事に慣れている上、才能はかけらもない俺は、先輩シェフや事務スタッフから、厨房よりも事務所に職場替えした方が良いんじゃないかと、さんざん言われていた。
勿論俺だって、邪魔にされてる厨房よりは、歓迎される事務所に行きたい…と思わないワケじゃない。
だけど、俺はやっぱりいつか、チーフと並んで料理が作りたくて…
「ホント、下っ端はツライやね〜」
ぐるぐる首を回して、溜息をつく。
もう既に時計の針は一時を過ぎていて、ひっきりなしに襲う眠気に、俺は欠伸ばかりしていた。
も、帰るのやめて、ココで寝ちゃおっかな…
ウチに帰ったとしても、六時にはまた出勤しなきゃならないから、ロクに寝られない。
でも、風呂にゆっくり風呂入りたいし、悩む…
涙のせいで霞む視界をごしごし擦り、俺はしょぼつく目でモニタを眺めた。

結局、いつの間にか床に転がって寝てしまっていて…、出勤してきた先輩に、蹴り起こされて目が覚める。
「ドコで寝てんだ!起きろ!」
「すみません!!」
慌てて飛び起きると、床で寝たせいか、身体中がギシギシ軋む。
「さっさと仕事をはじめねえか!」
ヤクザ紛いの迫力でどやされて、俺は首を竦めると、事務所を飛び出した。

昼休みに、事務所へ戻り、僅かにやり残していた仕事を終わらせる。
「あ、じゃあそれ、オーナーに渡してきてくれる?」
「はい」
全く人使いの荒い…。
朝から何にも食っていない俺は、足下をふらつかせながら別棟にあるオーナー室へ向かった。
ここへ来るのは、面接の時以来で、少し緊張する。
オーナーはここ以外にも、いくつかレストランや料亭を持っているやり手のビジネスマンで、恰幅の良い身体を、いつもぴしっとした仕立てのいいスーツに包んで、精力的に仕事をこなしている姿は、すごく格好いい。
顔を合わせるたびに、俺の事を気遣って、励ましてくれるから、俺はオーナーが大好きだ。
ノックをして、ドアを開けると、いかにも重役の机らしい大きく重厚なデスクの向こうで、オーナーが書類に目を落としていた。
「ん?」
顔をあげたオーナーが不思議そうな顔で俺を見上げる。
「大津君じゃないか。どうした?」
「あの、書類を持ってきました」
「どうして君が?」
「僕が作ったので」
書類を差し出すと、オーナーが黙ってそれをチェックする。
「君が、事務仕事までしてるとは知らなかった。いや、良くできてるよ」
褒められて、嬉しくなる。
何しろ毎日、怒られてばかりで、ここ数ヶ月褒められた事など一度も無い。
「ありがとうございます」
ぺこりと頭を下げると、オーナーは笑って俺を見上げた。
「忙しいところ悪いが、閉店後、来てくれるか。頼みたいことがある」
褒められて、うかれていた俺は、ハイ!と機嫌よく返事をして、オーナー室を後にした。


仕事後、クタクタになりながらも、なんとかオーナー室へと赴く。
頼みたい事ってなんだろう?
「お疲れさま。悪かったね、呼びつけて」
「いえ、そんな…」
「お疲れの所悪いが、いくつか仕事を頼まれてくれるか?」
オーナーの頼みとあらば、断れない。
指示と共に、次々と積み上げられる書類に、俺は内心溜息をついた。
「私はしばらくこちらで仕事をしているから、分からないことがあったら聞いてくれ」
「ハイ」
書類の束を手に、ついたてで仕切られた部屋の向こう側へと向かう。
広いオーナー室は二つに仕切られていて、俺は応接室っぽい雰囲気を備えた右側しか知らなかったが、左側は、整然とキャビネットが並び、PCが二台置かれていて、いかにもオフィスらしかった。
PCを立ち上げ、指示通りに仕事を進める。
明日が休みで良かった。
肉体労働と頭脳労働のコンボが二日連続はかなりキツイ。
昨日よりも頻繁に出るあくびに、視界を滲ませながらも、俺はなんとか書類の山をこなしていった。


「オーナー」
ドアが開く音と共に聞こえた声に、俺はぴくりと耳をそばだてた。
チーフの声だ。
俺は、キーボードを打ちつつも、意識は半ばついたての向こうへと行っていた。
これさえ無かったら、チーフが見られるのに!
内心地団駄を踏みつつ、でも、声が聞けて嬉しい…と頬を緩ませる。
「今度のパーティの事なんですけど…」
どうやら、今週末に貸し切りで行われる予定のパーティについての話らしい。
俺は、耳に心地いいチーフの声をBGMに調子よく仕事を進めた。
「…ん?」
最後の方になって、いきなり作業がややこしくなる。
俺は何度も書類をめくり、モニタを睨んで仕事に集中した。
「オ、オーナー!…あっ」
ぴくり、とキーボードを動く手が止まる。
脳味噌よりも先に身体が反応して、俺は一瞬どうして自分が手を止めたのかが分からなかった。
「はぁっ、あ、オーナー!」
今度ははっきりと聞こえてきた声に、どきりとする。
どう聞いても、今の声は、普通に会話しているとは思えない声で…
急に跳ねるように動き出した心臓に、汗が噴き出てくる。
な、にが起こってるんだ…?
ついたての向こうで起こっていることに、内心予想は付いたけれど、どうしてもそれが信じられない。
俺は、おそるおそる席を立つと、ついたてとついたての隙間から、そっと向こう側を覗いた。

ついたての向こうで繰り広げられていたのは、信じられないけど予想通りの光景で。
「あぁ、オーナー!」
「ほんとにイヤらしい奴だ。お前は」
オーナーは見たこともないような顔でにやにやと笑いながら、真っ白なチーフの尻を撫で回していた。
「どこに、何が欲しいんだ?言ってみろ」
机に伏せたチーフに覆い被さるようにして、オーナーが囁く。
チーフは、ぶるりと身体を震わせると、机についていた両手を後ろに回し、自分の尻を割り拡げた。
俺の大好きな、指の長い綺麗な手。
桜色の爪が綺麗に切りそろえられていて、いつでも清潔そのもののその手は、華麗に食材を捌き、フライパンを操った。
その、神の手とも言える美しい手が…尻を…
俺は半分卒倒しそうだったが、なんとか足を踏ん張った。
勿論、目はチーフに釘付けだ。
チーフは、俺に見られているとも知らずに、オーナーの目の前に全てをさらけ出していた。
「ここに、欲しい」
「何を」
「オーナーの…太くて硬いのが…」
聞いたこともない、舌足らずな甘えた声。
「こんなにひくつかせて…はしたない」
「あぁ…ん」
オーナーの指が後ろに触れた途端、チーフが身体をくねらせ、甘い声をあげる。
「前もこんなになってるじゃないか」
オーナーの声に視線を移すと、白く細い腿から突きだしたモノが見えた。
それに、オーナーの指が絡みつく。
俺は、ごくりと唾を飲み込んだ。
微かに濡れた音が聞こえる。
くちゅ…くちゅ…
それに混じる、チーフの喘ぎ声。
「オーナー…ん、あ、あぁ、オー…っくぅっ!」
「こういうときは、名前を呼べと言った筈だぞ」
オーナーの少し険のある声と共に、前をきつく戒められて、チーフが身体をびくつかせる。
「関谷さん。あぁ、お願い!」
叫ぶようなチーフの声に、オーナーは前をくつろがせると、一気にチーフを貫いた。
細いチーフの腰を掴み、激しく突き上げる。
「あぁ…んっ、もっと、あ、あぁ!」
チーフの声が一際高くなり、オーナーの腰がぶるりと震えた。


よろりとよろけて、ついたてから離れる。
チーフが…オーナーと…
思考がまとまらない。
「大津君」
「は、ハイっ!」
急に名前を呼ばれて、俺は反射的に返事をした。
「後は頼んだよ」
後って、頼むって、どういう意味??
パニックになる俺を置いて、オーナーは部屋を出ていってしまう。
バタン、とドアが閉まった途端、どさりと人の倒れる音がして、俺は慌ててついたての向こうへ飛び出した。
「チ、チーフ…」
下半身丸出しで、床に転がったチーフが、俺の呼びかけに顔をあげる。
身近で見る、チーフの白く綺麗な脚(…とお尻)に、俺は思わずごくりと唾を飲み込んだ。
「オーツくん…居たんだ」
緩みきった顔で、俺に向かってふにゃりと笑いかけてくる。
「…大丈夫、ですか?」
何度も唾を嚥下して、かろうじて問いかけると、チーフは身体を震わせて首を振った。
「ダメ」
「ダメ?ええと、どうすれば…」
おろおろとうろたえる俺をじっと見上げて、チーフは濡れた唇を開いた。
「続き…良い?」
「は?」
「オーナーに、後は頼むって言われたでしょ。ほら、早く…」
甘えるように腕を引っ張られて、思わず床に倒れ込む。
「後って…」
「僕、まだイってないもん。オーツくんのでイかせて?」
甘えたような声と共に、チーフの手が俺の股間に伸びてきて、俺はそれを止めることすらできずに固まっていた。
「「わ。想像通り…」
チーフの声にハッと我に返ると、いつの間にかムスコが外に出されている。
「チーフ!!!」
「オーツくんは、絶対良いモノ持ってる気がしたんだよね」
もはや半泣きの俺の気持ちを知ってか知らずか、チーフの手が俺のモノを丁寧になで回す。
まるで食材を吟味するかのような、繊細かつ優雅な手つき。
気持ちとは裏腹に、あっという間に膨れあがるモノに、俺は思わず真っ赤になった。
「あれ。オーツくん、赤くなってる」
指摘されて、ますます顔に血が昇る。
「照れてるの?可愛いね」
くるり、と指先で撫でられた先端から、ぬるりと雫が溢れ出た。
「可愛いから、食べちゃう」
ぱくん!とオーナーの口が、俺のモノを銜えるのを信じられないような気持ちで見つめる。
直後に襲ってきたたまらない快感に、自然とうなり声が出る。
恐ろしく巧いフェラチオに、俺の頭でぐちゃぐちゃしていた思いが吹っ飛んでしまった。
気持ちイイ、ただそれだけ。
「ん。舌触りも悪くない」
そう言う声は、普段のチーフみたいで、ますます身体が熱を増す。
ギリギリまで追いつめられた雰囲気に気が付いたのか、チーフは俺のモノから唇を放すと、俺の顔を見つめてにっこり笑った。
「出すのはちょっと待ってね。中に欲しいから」
言いながら、俺の脚を跨ぐ。
ほんとに何も考えられなくて、指一本動かせない。
そんな俺のモノを掴んで、後ろ手に位置を定めると、チーフは一気に腰を下ろしてきた。
「ふあ、あ…」
無意識に、情けない声が唇から漏れる。
チーフのソコは、ひどく熱くて、キツイけれどスムーズに俺を根本まで飲み込んでいった。
チーフが腰を振るたびに、脳味噌がグラグラするほどの快感に襲われる。
「あぁ、いぃ…っ、オーツくん、もっと…」
無意識のうちに、手がチーフの腰を掴んでいた。
完全に我を失って、メチャクチャに下から突き上げる。
俺の上で、オーナーはほのかに染まった白い身体をいやらしげにくねらせていた。
「あぁっっ」
身体を仰け反らせ、チーフが白濁を放つ。
それにつられるようにして、俺もチーフの中に放った。
倒れ込むように俺に身体を預けてきたチーフを、荒い息のまま抱きしめる。
「チーフ…チーフ…」
「チーフなんて止めてよ。職場セクハラしてる気になっちゃう」
悪戯っぽく笑ったチーフに、俺はまた赤くなった。
「じゃ、じゃあ、なんて呼べば…?」
「二人きりの時は、葉って呼んで」
「…ヨウ?」
「そう。可愛いね、オーツくん」
くしゃくしゃと髪を撫でられて、思わずほぅっと溜息が出る。
「明日は、厨房でヤろっか?」
「えぇえ?」
ていうか、明日って…???
「オーナーがね、自分だけじゃ物足りないだろうから、オーツ君にイロイロ相手して貰えって」
そういうのは、本人の了解を取ってから…
「最近、オーナー忙しくて、あんまり構ってくれなかったから、正直欲求不満なんだ。さっきだって、自分だけさっさとイって、帰っちゃうし」
俺を中に収めたまま、チーフが拗ねたように言う。
「でも、オーツくんなら、最後まで相手してくれるよね。なんたって若いし…」
チーフの手が、いつの間にかはだけられた俺の肌をするりと撫でる。
「肌も張りがあってイイ。やっぱり、新鮮なのは良いね」
一体何の話をしてるんだ??
「取り敢えず、もっかいココでする?」
既に、体力は限界だったが、反射的に頷いてしまう。
いつの間にか、チーフの中に居る俺自身は、すっかり元気になっていた。
最近は、側にすら寄れなかったチーフと、側どころか中にまで入ってしまう関係になったというのに、それまでの展開が、無茶苦茶かつ急すぎて、素直に嬉しいという感情がわいてこない。
今の自分に取り敢えず分かるのは、今夜は眠れないという事だけ。
疲労と快感に朦朧とする意識で、俺はぼんやり考えた。
ほんとに、仕事も恋も、ラクじゃない…


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