「改めまして、あけましておめでとうございます」
「おめでとうございます」
深々と、二人向かい合って頭を下げる。
「今年も宜しくお願いします」
「イヤイヤ、こちらこそよろしく」
僕らはまだベッドの上。
ついさっき、起きたところで、ナオさんは寝癖のついたボサボサ頭で、僕は思いきり寝乱れたパジャマ姿。
いつも通りの朝だけど、今日は元旦、特別な日だ。
予定としては、早起きしておせちとお雑煮を食べて、初詣に行くつもりだったけれど、除夜の鐘が鳴るよりも早く、ベッドに入ってしまった僕らは、年越しソバすら食べずに、年越しHをしてしまったので、ついつい寝過ごしてしまった。
気づけばすっかり新年で、もう10時を回っている。
「おせちとお雑煮、どうする?昨日、年越しソバたべらんなかったね」
ベッドから降りながら言うと、ナオさんはうん、と伸びをしてにっこり笑った。
「じゃあ取り敢えず、ソバ食べて、ちょびっとおせち摘んで、初詣行こう!んで、おやつにお雑煮にして、夕飯はごちそう食べよう」
「お雑煮がおやつ〜?」
「ダメ?」
「別にイイけど」
抱きついてきたナオさんにぶら下がるようにしながら、一緒にシャワーを浴びに行く。
さっぱりして着替えると、やっと少しお正月気分になってきた。
てんぷらそばとおせちなんていう、珍妙な組み合わせのブランチを食べ、歩いて一駅ほど先にある、小さな神社にお詣りに行く。
「う〜、寒いなぁ」
「お天気悪いね」
新年だというのに、空はどんよりとした雲が垂れ込めていて、おまけにびゅうびゅう北風が吹いている。
はじめは手を繋いでいたけれど、あまりの寒さに寄り添うようにして腕を組み、僕らは必要以上にはしゃいで、静かな道を歩いていった。
ようやく着いた神社の階段をよーいどんで駆け上り、タッチの差で僕が勝つ。
「勝ちぃ!」
「…やっぱ若さには勝てんね」
ガッツポーズをする僕の隣で、じじくさくため息をつくナオさんの鼻は真っ赤になっていて、僕は笑ってその鼻先に口付けた。
まばらに人が行き交う境内を、並んで歩き、お参りする。
ナオさんとずーっとずーっと仲良くできますように…とはお願いしなかった。
神様にお願いなんかしなくても、ナオさんと僕はずっと仲良しでいられるって、何の根拠もないのに、確信してる。
隣で熱心に拝んでいるナオさんは、どうだろう?
気になったから、ようやく顔をあげたナオさんに、単刀直入に聞いてみる。
「ねえ、僕たちがずっと仲良しでいられますようにってお願いした?」
ナオさんの顔を見上げて言うと、ナオさんはきょとんとした顔をして、それからううん、と首を振った。
「そういや忘れとった。ってか、んなお願いしなくてもええやんねえ」
「やっぱそうだよね〜」
人目も忘れて、抱きつきながら顔を見合わせる。
「んなお願いしなくても、ずっと仲良しだもんね〜」
「ね〜」
ちゅっと小さくキスをして、僕らは見つめ合って笑った。

腕を組み、スキップまじりに歩いていると、空から降ってきた白いものが僕のほっぺたにくっついた。
「あ、雪だ」
すぐに水滴になったそれを、ぺろりと舐めて、ナオさんが嬉しげに空を見上げる。
つられて僕も天を仰ぐと、鈍色の空からちらちら雪が舞い落ちてくる。
「初雪やね」
「そうだね」
雪の中を傘も差さずに歩くのは、すごく楽しかった。
じきに激しくなった雪に、視界がまっしろになる。
「積もらないかなあ」
「積もったら、ゆきだるま作ろう!」
「雪合戦もしよう!」
「かまくらも!」
「それはムリかも」
笑いころげながら、さんざん寄り道して帰ってきたせいで、家につく頃には、僕らはすっかりびしょぬれだった。
ハァハァ荒い息をつきながら、玄関で雪を払い、手袋を投げ、帽子を取り、マフラーを取り、コートを脱ぎ、セーターを脱ぎ、シャツを脱ぎ、ジーンズを脱ぎ捨て、何もかもから自由になって、そのままベッドに飛び込む。
僕らが行くべき場所は、お風呂だった気がしたけれど、気づいた時には冷え切った身体を擦り付け合うようにして、荒々しくキスを交わしていた。
「冷たい手」
僕が首に回した手に、ナオさんが首を竦める。
「一番あったかい所へどうぞ」
ナオさんは僕の手を掴むと、指先にひとつ口付けて、自分の股間へと押し当てた。
たしかにそこは、触れると火傷しそうに熱くて。
僕はそっと手に包み込むと、小さく手を動かした。
僕のと違って温かなナオさんの手が、冷えた僕の身体をくまなく撫でて暖めてくれる。
あちこちに落ちる優しいキス。
気持ちよくて、思わず甘い声が出る。
いつの間にか、僕の身体は頭のてっぺんからつま先まで、勿論、手の指先もぽっかぽかになっていた。
「あったまった」
腕を伸ばし、ナオさんにぎゅうぎゅう抱きつく。
「ぬくぬく〜」
胸に顔を擦り付けてくるナオさんの髪に指先を絡めていると、ナオさんがひょいと半回転して、僕が上になった。
ちゅっとナオさんの唇に口づけ、それから胸にも口づけを落とす。
小さく音を立てながら、自分がしたいと思ったところ、全部にキスして、最後に僕の手の中で、すっかり成長していたモノをぱくんと口に銜えた。
「くふん」
ナオさんが、気持ちよさげに鼻を鳴らす。
僕は、上から下まで余すところなく舐めながら、熱心に手を動かした。
無心にしゃぶりつく僕の髪を、ナオさんの手が優しく梳く。
ぐっと張り出すカリの部分をちろちろと舐めながら、これが自分の中に入ってくる所を想像すると、もう欲しくてたまらなくなる。
「も、挿れていい?」
顔をあげて、ナオさんを見上げる。
きっと僕は、すごく物欲しげな顔をしてるんだろう。
ナオさんはにやりと笑うと、濡れた僕の唇を親指で拭った。
「まだ、まこちゃんの準備が出来てないやん」
「いい。大丈夫だから」
欲しい、そう言おうと思ったのに、ナオさんは濡れた指を舐めながら首を振った。
「だーめ。お正月なんやから、ゆっくりヤろう」
言いながら、僕のお尻を柔らかく撫でる。
「こっち向けて?」
この格好はすっごく恥ずかしいからイヤなんだけど…、そうも言ってられない僕は、仕方なしにナオさんの上に乗ったまま、お尻をナオさんの顔に向けた。
「ひゃっ」
ぴちゃりと濡れた音と共に、双丘の狭間に舌が這う。
同時に前を弄られて、思わず僕は声をあげた。
すっかり勃ちあがっている自身の輪郭をなぞるように指が動き、後ろをこじ開けるようにして、舌がねじ込まれる。
濡れた音を立てながら、ナオさんの舌はそこを出入りし、その何とも言えない感覚に、僕は震えながら、ぎゅっとナオさんのモノを握っていた。
「あ、あぁっ、あ、あっ」
しっかり湿されたそこに、指がずちゅりと突き入れられる。
僕の感じる場所をダイレクトに刺激する指先に、僕の前は今にも弾けそうだった。
「ほら、まこちゃん。僕のも」
急かされて、手の中でびくびくと脈打つモノに、なんとか口に咥える。
二本に増えた指が、僕の中をぐちゃぐちゃとかきまわし、あまりの快感に頭の中がドロドロになってしまう気さえする。
「んっ、ナ、ナオさんっ」
飲み込みきれない唾液が、口端から溢れ、僕の腰がもじもじと絶え間なく揺れる。
「そろそろイイかな…」
指がゆっくりと引き出され、お尻を優しく甘噛みされる。
「まこちゃん、乗って」
言われた声に、僕はのろのろと身体を起こすと、ナオさんの身体を跨いで向き直った。
「すんごくえっちぃ顔」
ナオさんの手が、上気した僕の頬を撫でる。
僕は、ナオさんの助けを借りながら、腹に向かって反り返るソレを、自分の中心へ宛った。
ゆっくり腰を下ろすと、自分で育てた大きなモノが、めり込むように中へと侵入してくる。
息もできないこの苦しい瞬間が、僕はけっこう好きだったりして。
じっくりとナオさんの大きさを身体で味わいながら、1ミリずつ腰を落としていく。
一番太い場所を過ぎると、あとは割にすんなりと僕の奥へそれは収まった。
ぴっちり根元までくわえこむと、ほんとに繋がってるって感じがする。
ずしりと重い下腹部。
満たされるからだとこころ。
僕は大きくため息をつくと、目を開けてナオさんを見つめた。
ナオさんも、僕を見つめている。
見守られてるって感じがする、優しい視線。
僕は視線を絡めたまま、ナオさんの腹に手をつき、ゆっくりと腰をあげた。
上げた分だて抜け出たそれを、もう一度身体に収め、また腰をあげる。
一度動き始めると、もう止まらなかった。
自分の中の快感を追って、ひたすらに腰を上下させる。
「んあっ、あっ、あんっ、あ、ぁああっ」
僕の動きに合わせたり、時にわざとタイミングを外したりして、ナオさんも下から僕を突き上げ、僕はナオさんの上で仰け反りながら、高い声をあげて白濁を放った。
ナオさんの胸元にまで白濁が飛び散り、思い切り締め付けたナオさんが、僕の中で膨れあがる。
「まこ」
身体の奥に流れ込む熱い迸り。
僕はぐったり脱力すると、自分の白濁で汚れたナオさんの胸に倒れ込んだ。
「お正月そうそう、ハードやね」
きゅっと僕をだきしめて、ナオさんがからかうように囁く。
「…疲れた」
「だろうね〜」
汗で額に張り付いた髪を優しく掻きあげて、ナオさんはちゅっとおでこにキスをした。
「ちょっと休み」
優しく僕をシーツに下ろし、ナオさんがあごまで毛布をかけてくれる。
「起きたらおやつにお雑煮食べて、それから雪だるまでも作ろ」
「…ん」
ナオさんにくっつきながら、眠たげに生返事を返す。
「まだ、雪降ってるの?」
「吹雪いてる」
外は吹雪だというのに、僕らは暖房もなしでぽかぽか。
「良いお正月やね」
のんびり言うナオさんの言葉に、僕は笑って頷いた。


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