「何見てんだよ」
「…コレよかお前のがでかいな〜と思ってさ」
濃紫の立派なナスを手にして、京がにやりと笑う。
「なっ」
股間とナスをじろじろと見比べる京に、俺は赤くなって絶句した。
「こーゆー細長いモン見ると、ついつい良のと較べちゃうんだよね」
まな板に置いたナスに、すぱんと勢いよく包丁を入れながら、京が呟く。
「にんじんとか、きゅうりとか…」
ナスを見ていた俺は、なんとなくウッとなって、股間を押さえると、京の後頭部に向かって喚いた。
「おっ、お前という奴は…、いつもそんなこと考えながら料理してんのか?」
「そだよ」
イヤミまじりの冗談のつもりだったのに、あっさりと頷かれて言葉に詰まる。
「きゅうりのトゲトゲは気持ちよさそうだな〜とか、ナスはつるんとしてるから意外に入れやすいかも、とか、大根はさすがに勘弁だな…とか」
手際良く料理を続けながら、京が振り返って不敵に笑った。
「試したことは、無いけどね」
「当たり前だっ!」
あんまりな言葉に、思わず叫ぶ。
俺という恋人が居ながら、野菜と遊ぶ奴があるか!
そう云ってむくれてみせると、京は包丁を手に持ったまま、じっと俺の顔を見た。
「でも、最近ちょっとマンネリ気味だし?」
小さく首をかしげて云われて、少し言葉に詰まる。
たしかに…マンネリといえば、マンネリかな?
勿論セックスは好きだけど、俺はもともと淡泊なタチで、それほど情熱を燃やしてあれこれするほうじゃない。
けれど、京は…
黙ってしまった俺に背を向け、京が料理の続きを始める。
我が儘で、自分勝手で、独占欲が強くて、意地悪で、その上すごく淫乱で…でもたまらなく魅力的。
それが、京。
俺は、京の後ろ姿を見つめて、ゆっくりと立ちあがった。
「…何?」
後ろに立つと、鬱陶しそうに京が振り返る。
「もうちょっと待っててよ。手伝いなら要らないから」
「手伝いに来たんじゃねえよ」
俺は低く言いながら、京の身体を後ろから抱きすくめた。
「野菜に浮気されちゃたまんねえからな」
京の手から、包丁を取り上げ流しに置く。
「…脱マンネリ?」
首をひねって俺の顔を見上げ、京がにんまりと笑う。
「そんなトコ」
俺は笑って、京の唇に唇を押しつけた。

「立ったまますんの初めてだよな」
俺の首に腕を回して、ぶら下がるようにしながら、嬉しげに京が笑う。
「だって、立ったままなんて疲れそうじゃん」
京の服を乱し、素肌に触れる。
クールな顔つきに反して、京の身体はすごく温かい。
脇腹から胸へと手のひらで撫で上げると、京が小さく息を漏らした。
首に回っていた筈の手が、いつの間にか下に降りていて、俺の股間を撫でている。
首筋に顔を埋めて、軽く歯を立ててやると、京は鼻に掛かった声を漏らして、身体を震わせた。
「ねぇ」
膨らみ始めた前の形を指先で辿りながら、京が甘えた声を出す。
「ん〜?」
ふつりと勃ちあがった胸の尖りを指先で転がしながら、京の顔を見ると、京はとろりとした眼で俺を見つめてきた。
「挿れるとき、バックでして」
「はぁ?」
思わず間抜けな声を出してしまう。
「立ちバック、やってみたい」
そんな真面目な顔して言うことか、それが。
あきれつつも笑ってしまう。
「あーいーとも。立ちバックでガンガン突いてやるよ」
半ばやけくそで言うと、京は実に嬉しそうな顔をして、俺に抱きついてきた。

「う…」
思わず低く呻くと、ぺちゃりと音がして、舌が離れた。
「気持ちイイ?」
舌なめずりをするように、赤い唇を舐めながら、俺を見上げて京が聞く。
「イイ」
掠れ声で頷くと、京は満足げに笑って、再び俺のモノを口に含んだ。
じゅるりと卑猥な音を立てて、喉奥深くまで飲み込み、舌と唇を使って扱き上げる。
相変わらずの腕前にあっと言う間にイきそうになって、俺は慌てて軽く京の髪を掴むと顔を上げさせた。
「ちったあ加減しろよ。先にイきそうだ」
うなり声混じりに言うと、京が舌打ちして親指の腹で濡れた唇を拭う。
「オレより先にイくのはナシ」
「ハイハイ」
聞き慣れた台詞に、俺は苦笑しながら跪いた京の腕を引いた。
立たせた京を流し台に押しつけて、露わになった尻を揉みしだくと、それだけで京の唇からため声が漏れる。
「濡らして」
俺に向かって尻を突き出し、甘えた声で訴える京に、俺はわざと京の勃ちあがった前を掴んで囁いた。
「もう、濡れてる」
実際、掴んだソコは、だらだらと溢れ出す先走りで濡れ濡れだ。
「バカ。分かってるだろ」
喘ぎ混じりに言いながら、京がギュウっと京のモノを掴んだ俺の手を抓る。
「いってぇ!」
慌てて手を離した俺を、肩越しに睨んで、京がぼそりと呟いた。
「早くしろ」
「分かったよ」
赤くなった手の甲をさすりながら、俺は慌ててご機嫌取りに、京の頬に口づけた。


「あぁん!あ、あ…っ」
台所中に嬌声を響かせ、京が身体をくねらせる。
俺は、すっかり柔らかくなった京の後ろから舌を離すと、代わりに指を二本纏めて突っ込んだ。
「あぁっ!や、もぅ…」
指を出し入れする度に、くちゅくちゅと濡れた音が響き、後腔がぎゅうぎゅうと指を締め付ける。
今にもイきそうな雰囲気に、俺は焦って指を引き抜くと、さっきから準備万端で待ちかまえていたモノを押し当てた。
「はぁ、ぁ…っ」
待ちきれないとでも言うように、京の腰が揺れ、俺のモノを飲み込もうと後腔がひくつく。
俺は両手で京の細い腰を掴むと、一気に腰を突き入れた。
「あぁ、あ、あぁっ」
俺の手の下で、京の腰がびくびくと跳ねる。
「動かすぞ」
初めての体位は思いの外ヨくて、俺は性急に腰を動かし始めた。
つま先立つようにして、流し台に掴まっている京の足の筋肉が、ぴくぴくと引きつるように震え、俺のモノをぎゅうぎゅうと締め付ける。
食いちぎられそうなキツさに息を乱しながらも、俺は約束通り、手加減せずにガンガン後ろから突いてやった。
「どうだ?コレがしたかったんだろ?」
ぴったりと身体を密着させて、後ろから耳許に囁く。
「イイか…?」
囁きついでに耳の輪郭に沿ってべろりと舐め上げてやると、京は荒く喘ぎながら頷いた。
「イイ…っ」
汗ばみ始めた身体に手のひらを這わせ、指先に触れる尖りをきつめに捻り上げる。
「んあ、あ…」
鼻に掛かった声をあげ、俺の動きを煽るように京は淫らに腰を振った。
「もっ、と。もっと突いて。奥まで。ねえ…っ」
俺としては結構頑張ってるつもりだったが、貪欲な京にはまだまだ物足りないらしい。
「後悔すんなよ」
俺は、京の華奢な身体を抱きかかえるようにして、激しく腰を突き立てた。
甘い声が、悲鳴混じりの喘ぎ声に変わるまで、京を揺さぶり、奥を抉る。
「あ…、も、イくっ」
もうダメかも…と俺が思い始めた時、京が掠れた声で叫び、身体を痙攣させた。
同時に俺も、京の中へ迸りを流し込む。
終わった時には汗びっしょりで、ひざががくがくした。


「…よく食うな」
「運動したからな」
床に伸びている京の横で、レトルトカレーをがつがつとかっこむ。
料理途中の京に手を出したせいで、夕飯は完成することなく。
俺はしかたなしに自分でカレーをあっためた。
「アレ、どうすんの?」
台所に散乱しているナスやら大根やらを指さし京を振り返ると、京は既に穏やかな寝息を立てていた。
「…ナス、ねえ」
毎日自分の為に台所に立ってくれる恋人が、よもや日々あんなことを考えているとは思わなかった。
野菜に浮気されないように、せいぜい毎日可愛がってやるか。
寝ている京に毛布を掛けてやりながら、俺はなんだか複雑な気持ちだった。
ナス…ねえ。


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